培養

2020.05.12

タイムラプスインキュベーターについて

今回はタイムラプスインキュベーターについてお話します。
自然妊娠では「女性の体内(卵管)」の「卵管液」の中で卵子と精子は出会い、そして、受精卵は成長します。体外受精は「女性の体内(卵管)」で起きることを体外で再現・真似をする技術と言えます。体外で「卵管液」の代わりになるのが「培養液」、そして体外で「女性の体内(卵管)」の代わりになるのが「インキュベーター」です。

この「インキュベーター」の進化は目覚ましく、見た目も機能も大きく変化しています。

2000年頃のインキュベーターは非常に大きく、容量は165リットルもありました。2005年頃に登場したものは57リットルに、2015年頃に登場したものはなんと0.3リットルと大幅に小さくなっています。

インキュベーターの小型化は受精卵を守る上で非常に大切なことです。体外の環境(≒空気の組成:二酸化炭素濃度0.03%、酸素濃度21%)は体内の環境とは全く異なり、インキュベーターの中ではガスを流すことで体内と似たような環境(温度37℃、二酸化炭素濃度5-6%、酸素濃度5%)を作り出しています。

したがって、一旦、インキュベーターの扉を開くと、体内と似た環境は一瞬にして体外の環境に置き換わり、インキュベーターの中の受精卵は体外に放置された状態と同じになってしまいます。インキュベーターが大きければ大きいほど、元の安定した環境に戻るまでに長い時間を必要とし、その間、受精卵はダメージを受けてしまいます。逆にインキュベーターが小さければ小さいほど、体内の環境に戻るまでの時間は短くなり、受精卵はダメージを受けにくくなります。

受精卵の観察ではインキュベーターの外に受精卵を取り出して顕微鏡下で見る必要があるためダメージを与えてしまいます。どうにかして受精卵をインキュベーターの中に入れたまま観察することが出来ないか?というコンセプトの元に生まれたのがタイムラプスインキュベーターです。

タイムラプスインキュベーターの中には顕微鏡を組み込んだカメラが内蔵されているので、受精卵をインキュベーターの外に取り出すことなく、撮影された顕微鏡写真を通して受精卵の観察を行うことが出来るようになりました。タイムラプスインキュベーターを用いることで、受精卵を外に取り出す回数を減らせるため、受精卵の発育が改善されたとする報告が多くされています。この写真撮影機能の追加がインキュベーター小型化の次の進化になります。現在、当院では2つのメーカー、合計4台のタイムラプスインキュベーターで全ての受精卵を培養しています。

タイムラプスインキュベーターのメリットは受精卵を外に取り出す回数を減らすことが出来るようになっただけではなく、撮影した写真を繋ぎ合わせてパラパラ漫画のように見ることで、従来の一点のみでの定点観察ではなく、動画による連続観察を行えるようになったことで、これまでに見えていなかった多くの情報を得ることが出来る様にもなったことです。

これからは、この連続観察により得られた情報を基に、より妊娠する可能性の高い受精卵の選別に活かしていければと思います。

文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 生殖補助医療管理胚培養士)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# インキュベーター

# タイムラプス

亀田IVFクリニック幕張 生殖医療事業管理部 培養管理室 管理胚培養士

平岡 謙一郎

亀田IVFクリニック幕張 生殖補助医療管理胚培養士。広島県立大学大学院修了(博士)。体外受精の中心となる受精・培養・凍結について専門知見に基づき紹介している。

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