多胎妊娠について
多胎妊娠は双胎など複数の胎児を妊娠することで、自然妊娠では1%程度、ARTでは3%程度発生します。早産や低出生体重児などのリスクが高いため、多胎妊娠の防止、リスクの評価、妊娠中の適切な管理が重要です。
多胎妊娠とは
いわゆる「ふたご(双胎)」や「みつご(品胎)」など、複数の胎児が存在する妊娠のことを多胎妊娠と言います。双胎妊娠が大部分を占めます。
発症頻度と原因
自然妊娠では1%程度の確率で起こるとされています。
不妊治療による妊娠の場合、一般不妊治療では排卵誘発剤を用いて複数の卵胞が発育・排卵した場合に、生殖補助医療(ART)では複数胚を同一周期に胚移植することで起こりやすくなります。また、明確に示されてはいませんが、アシステッドハッチング(補助孵化)により多胎妊娠が増加する可能性も報告されています。
日本産科婦人科学会の見解では、「移植する胚は原則として単一とする。ただし、35歳以上の女性、または2回以上続けて妊娠不成立であった女性などについては、2胚移植を許容する」とされているため、国内でのARTによる多胎率は3%程度とされています。また、単一胚移植であっても0.97〜2.35%の確率で多胎妊娠が生じると報告されています。
特に着床前遺伝学的検査を実施した胚の場合には着床率が高いため、「単一胚移植の原則を堅持する」とされています。
リスク
多胎妊娠では一般的に下記のリスクが上昇するとされています。
母体:妊娠高血圧症候群、血栓塞栓症、帝王切開
胎児:早産、低出生体重児
したがって、なるべく多胎妊娠を防止することと、リスクを評価して妊娠中の適切な管理を行うことが重要です。
双胎妊娠の分類とリスク評価
双胎妊娠はタイプによってリスクが異なるため、通常は妊娠14週までに超音波検査で膜性診断を行い、どのタイプの双胎妊娠なのか、リスクトリアージを行います。
① 二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)
胎児の部屋、胎盤がそれぞれに分かれています。1卵性でも起こりますが、2卵性の場合は通常このタイプなので、複数卵胞発育や複数胚移植をした場合に起こりやすいと考えられます。
特にARTによるDD双胎では自然妊娠のDD双胎よりも前置胎盤、早産、低出生体重児、先天異常のリスクが高いという報告もあります。

DD双胎
②-1 一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)
胎児の部屋は分かれていますが、胎盤を共有しており、通常は1卵性です。

MD双胎
②-2 一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)
胎児の部屋も胎盤も共有しており、通常は1卵性です。頻度は低いですが、最もリスクの高いタイプです。
これら一絨毛膜双胎の場合には、一つの胎盤を共有しているため、血流の不均衡(双胎間輸血症候群;TTTS)や胎盤を占有する面積の差が生じることがあります。結果として両児の状態が悪化することがあるため、新生児集中治療室(NICU)を有する高次施設における周産期管理が必要となります。また、一卵性双胎では先天異常も増加することが知られています。
Vanishing twin
Vanishing twinとは、妊娠初期に双胎妊娠の一方の胎児が自然に消失する現象を指します。DD双胎の場合、残った児が問題なく分娩に至ることも多いものの、早産や低出生体重児のリスクがやや高まる可能性が報告されています。一方、MD双胎やMM双胎ではもう一方の胎児にも流産するなどのリスクが高いと考えられています。
まとめ
保険診療における胚移植回数には上限が定められているため、治療の経過によっては二胚移植を実施するかどうかの選択が迫られる場面があります。一方で多胎妊娠には上記のようなさまざまなリスクあります。患者さまの状況に応じて検討する必要があります。
生殖医療の目的は、単に赤ちゃんを得ることではなく「元気な赤ちゃんを得ること」ですので、安全性を最優先に治療を行います。
ご不明な点やご心配なことがございましたら、いつでもお気軽にお尋ねください。患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な治療プランをご提案いたします。



