
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査(HSG)は、造影剤を用いて子宮内腔の状態と卵管の通過性を調べる不妊症の基本検査です。月経終了後から排卵日までに実施します。
検査の内容・目的
子宮卵管造影検査(HSG)は造影剤を用いて子宮内腔の状態と卵管の通過性を調べる卵管疎通性検査です。当院で評価しているポイントは以下のとおりです。
- 子宮の内側の状態(子宮奇形など)
- 卵管の疎通性
- 卵管周囲の癒着の推測
この検査は、卵管の通過性や子宮腔内の形状を確認するために造影剤を子宮→卵管→腹腔へと注入し、レントゲン検査で確認する検査です。卵管疎通性検査は不妊症の原因検索としての一次検査として推奨レベルB(勧められる:産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023)となっており、不妊治療計画作成にあたっては必要な検査になります。
検査適応
下記の患者さま以外は誰でも受けていただく事ができます。
- ヨードアレルギー、あるいはその疑いがある方
- 重篤な甲状腺疾患の方
- メトホルミン(グリコラン、メルビン)を内服している方 →当院では子宮鏡下通水検査・子宮卵管超音波造影検査をおすすめしております
- 妊娠している可能性がある方
- クラミジア検査を行っていない方 →検査を行って妊娠、クラミジア感染がないことを確認してから検査を行います
検査を行う時期について
通常月経が終わってから排卵日までに行います。検査までは避妊しておく必要があります。
造影剤について
当院では水溶性造影剤を用いています。油性造影剤と水溶性造影剤の2種類があり、油性造影剤の方が検査後の卵管フラッシング効果による妊娠率が高いとされている一方、血管混入、腹腔内炎症性変化、長期的な腹腔内残存などの副作用も報告されています。
あくまで子宮卵管造影検査は卵管疎通性を見る検査で、妊娠率を上げるための治療ではないと考えているため、水溶性造影剤を選択しています。
合併症
性器出血、疼痛、感染などの合併症があります。ここに書かれている合併症は起こる頻度は低く、また起こった場合も無治療で軽快することがほとんどです。
また、造影剤を使用しますので、下記の点の注意も必要です。
造影剤アレルギーについて
本検査ではヨード造影剤を使用しますので、一定の頻度で次のような副作用が生じることが知られています。
軽い副作用:かゆみ、発疹、発赤、悪心、嘔吐
100人に1人以下の確率で起こりますが、特に治療を必要としないことが多いです。
重篤な副作用:息苦しさ、嗄声、血圧低下(ショック)、意識消失、腎不全
発生する頻度は、2.5万人に1人、入院のうえ治療が必要です。
遅発性副作用:頭痛、嘔気、かゆみ、発疹、咳、冷や汗、動悸
発生頻度は1000人に1人、検査後数時間から数日後に副作用が発生することがあります。
実際の検査
透視できるレントゲン室で行います。
- 仰向けになっていただき膣内の洗浄を行います。
- 子宮口から細い管(バルーンカテーテル)を入れて固定します。
- 造影剤を注入し、子宮内腔から卵管、腹腔内へ造影剤が流れていく状態を透視下(画像をリアルタイムで見ながら)に観察しレントゲン撮影します。
透視下で行う事により、患者さまの疼痛の程度を画像所見とあわせて判断し、注入量や速度も調整していきます。
- 子宮内腔が造影されていきます
- 次に卵管がうつってきます
- 両方の卵管がうつってきます
異常所見
- 卵管閉塞
- 卵管留水症
麻酔
当院では無麻酔で行っております。もし鎮痛剤をご希望の場合はスタッフまでお申し付け下さい。また、鎮静下での希望の場合は、子宮鏡下卵管通色素検査(自費検査)にて対応いたします。
検査で異常があった場合
子宮内ポリープ・粘膜下筋腫・子宮内癒着が疑われた場合
子宮鏡検査を行います。子宮鏡検査で診断がつき、不妊の原因や貧血などの原因と判断した場合、手術の適応となります。
子宮形態異常が疑われた場合
3D経腟超音波検査、MRI検査を行い、どのような奇形かを判断し治療方針を決定いたします。
卵管の狭窄、閉塞病変が疑われた場合
筋攣縮や異物の影響で偽陽性となっている可能性も否定できないため、再評価を行うことがあります。 子宮に近い部位の病変では卵管鏡下卵管形成術(FT)、遠位部の病変では腹腔鏡下卵管形成術を検討します。 しかし、物理的な狭窄は解除できても機能まで戻す事はできませんので、年齢や他の原因などを総合的に判断し体外受精による治療に進むことがあります。
卵管の拡張病変(卵管留水症)が疑われた場合
3D経腟超音波検査・MRI検査を行い卵管状態評価、また子宮内腔への卵管液の逆流(子宮留水症)の有無を確認し、手術治療の適応があるかどうか検討いたします。体外受精に移行した際、高度の卵管留水症があると着床障害を起こすことがあります。そのため体外受精の反復不成功例の場合は卵管切除術や卵管結紮術を行います。
費用
子宮卵管造影検査(HSG)は健康保険適用です。
注意事項
代替検査提案として、子宮鏡下通色素検査、子宮卵管超音波造影検査(HyCoSy:Hysterosalpingo-Contrast Sonography)などがあります。患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な検査・治療プランをご提案いたします。
- 通常の撮影枚数は3〜5枚で、別途、検査判断料・造影剤料等もあわせると約4,000円〜5,000円程度(保険:3割負担)になります。
- 別途チューブ代として3,300円(税込)を申し受けます。
- 抗生剤が必要な場合、3日分投与で別途約600〜700円(保険)がかかります。