
SEET法(先進医療:子宮内膜刺激術)
SEET法は胚培養液の上清を移植前に子宮内へ注入し、内膜を刺激することで着床環境を整える先進医療です。反復着床不成功例で、クロストークの補完を目的に実施されます。
SEET法とは
SEET法(Stimulation of Endometrium Embryo Transfer)は、胚培養液の上清(胚が放出した因子を含む培養液)を凍結保存し、胚移植の2〜3日前に子宮内へ注入することで、着床率の改善を期待する技術です。
これは、胚と子宮内膜の間に存在する「クロストーク(生物学的シグナルのやりとり)」に着目した方法で、移植前に子宮内膜を胚の存在に近い状態へ準備させることを目的としています。
クロストークとSEET法の意義
自然な妊娠過程では、初期胚が子宮内膜にシグナルを送り、着床の準備を進めています。胚盤胞移植ではこのクロストークのタイミングが失われやすく、着床率が低下する可能性があります。
これを補う目的で開発されたのがSEET法です。従来の二段階胚移植(初期胚+胚盤胞)と比較し、多胎妊娠のリスクを避けながら、培養上清液によって子宮内膜を刺激することができます。
対象となる方
- 良好な胚を複数回移植しても着床しない方(反復着床不成功例)
- 移植前の子宮内膜環境の改善を希望される方
- 免疫的・着床因子の問題が疑われる方で、医師が適応を判断した場合
実施方法
SEET法は、胚移植予定の2〜3日前に行います。手技は胚移植と同様で、以下のように実施されます。
- 胚移植用のチューブを経腟的に挿入し、超音波下で位置を確認
- 凍結保存しておいた胚培養上清液を子宮内に注入
- 手技は5分程度で終了し、痛みは胚移植と同程度とされています
結果と評価
SEET法の有効性は研究段階であり、明確な有効性が確認されているわけではありませんが、着床率や妊娠率の向上が報告された症例もあります。治療効果は個人差があり、他の治療法と併用されることもあります。なお、児に対する安全性は現在までに問題ないと報告されています。
費用について
通常の保険診療と併せて実施することが可能ですが、先進医療のため患者さまの全額自己負担となります。ただし、民間の医療保険(先進医療特約)や都道府県などの助成制度を利用することで負担を軽減できることがあります。
先進医療に係る費用:39,910円(患者全額自己負担)
注意事項
治療の有効性は現在も検討が進められており、誰にでも有効な治療とは考えられていません。当院では患者さまの状況に応じて個別に検査の適応を判断し、十分な説明を行った上で実施いたします。
代替案として、これまでの治療経過によってはERA検査(子宮内膜受容能検査1)や免疫学的検査(Th1/Th2比など)を提案することもあります。患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な検査・治療プランをご提案いたします。