Treatments診療内容
Endometrial Microbiome Test

子宮内フローラ検査(先進医療:子宮内細菌叢検査2)

子宮内の細菌バランスを調べ、着床に適した環境かを確認する子宮内膜組織を採取して行う次世代シークエンサーを用いた検査です。慢性子宮内膜炎を疑う反復着床不全や流産を繰り返すような方が対象です。

子宮内フローラ検査とは

子宮内フローラ検査は、慢性子宮内膜炎を疑い、体外受精治療が反復不成功の方や流産を繰り返す方に行い、子宮内の細菌環境が着床に適しているかどうかを調べる検査です。子宮内の細菌バランスを詳細に分析することで、妊娠成功率の向上と流産率の低下を目的として行います。

子宮内フローラ(子宮内細菌叢)とは

近年まで、子宮内は無菌と考えられていましたが、実は子宮内にも細菌が存在することが発見されました。腸内フローラと同様に、子宮内にも多種多様な細菌が存在し、それらの集団が「子宮内フローラ(子宮内細菌叢)」と呼ばれています。
この子宮内フローラのバランスが妊娠・出産に大きく影響することが明らかになっています。健康な子宮内では乳酸菌(Lactobacillus属)が優勢であり、これが着床に適した環境を作り出しています。
慢性子宮内膜炎や子宮内細菌叢の異常は、生殖補助医療を受けている患者さまでは約30%、さらに反復着床不全(RIF)および不育症(RPL)患者さまでは60%に達すると報告されています。また、近年の研究では、Lactobacillus優位な環境が出生率の向上と相関し、病原性細菌の存在が着床後の妊娠継続に負の影響を与えることが明らかになっています。

子宮内フローラの妊娠・出産への影響

研究によると、子宮内のラクトバチルスの割合によって妊娠率と出生率に大きな差が生じることが示されています。これは子宮内環境の改善、免疫調整作用に影響を与えているとされています。

検査技術の特徴

子宮内フローラ検査では、Varinos株式会社がNGS(次世代シークエンサー)技術を用いて、子宮内腔液に含まれる細菌の16Sリボソーム RNA解析を行います。
培養では検出できない細菌も含めて、子宮内に存在するLactobacillus属菌の割合やその他の細菌叢の分布を遺伝子レベルで同定し、割合を定量化します。

検査の対象者

以下のいずれかに該当する方が対象となります。

  • 体外受精-胚移植治療を受けており2回以上移植を行っても臨床的妊娠のない反復着床不全の方
  • 2回以上の流産既往がある方(不育症・反復流産)
  • 細菌性腟症の難治症例の方
  • 子宮鏡検査で慢性子宮内膜炎(CE)を疑う症例の方

除外基準

  • 重篤な合併症を有する方
  • 子宮因子(子宮形態異常や粘膜筋腫)を有し、未治療の方

検査方法

検査は外来で行います。自然周期では黄体期に、ホルモン調整周期ではプロゲステロン投与後5〜6日目に子宮内膜を含む子宮内腔液を採取します。

検査手順

  1. 経腟超音波にて子宮内膜厚を測定し、子宮の方向性を確認
  2. 腟鏡診を行い、腟内細菌の混入を防ぐため生理食塩水で腟内を洗浄
  3. 子宮内膜細胞採取器具を用いて子宮内膜を含む子宮内腔液を採取
  4. 採取した検体を専用の検査試薬に保存
  5. 検体を検査会社発送
  6. NGS(次世代シークエンサー)を用いた16SリボソームRNA解析を実施

画像提供:Varinos

検査結果と判定基準

検査結果は、Lactobacillus属の占める割合に基づいて判定されます。

  • LDM(Lactobacillus Dominant Microbiota):ラクトバチルス率90%以上
  • NLDM(Non-Lactobacillus Dominant Microbiota):ラクトバチルス率90%未満

この基準に基づき、子宮内細菌叢の状態を評価し、治療方針を決定します。

治療方針

検査結果に基づき、以下の個別化治療を提案いたします。

  • LDM(Lactobacillus Dominant Microbiota)であり、病原菌が検出されていない場合は介入の必要がありません。
  • NLDM(Non-Lactobacillus Dominant Microbiota)の場合、抗菌薬治療、プロバイオティクス投与、生活習慣の改善を検討していきます。

費用について

通常の保険診療と併せて実施することが可能ですが、先進医療のため患者さまの全額自己負担となります。ただし、民間の医療保険(先進医療特約)や都道府県などの助成制度を利用することで負担を軽減できることがあります。

先進医療に係る費用: 44,000円(患者さま全額自己負担)

注意事項

治療の有効性は現在も検討が進められており、誰にでも有効な治療とは考えられていません。当院では患者さまの状況に応じて個別に検査の適応を判断し、十分な説明を行った上で実施いたします。
代替検査提案としてEMMA・ALICE検査(先進医療:子宮内細菌叢検査1)、子宮鏡検査、子宮内膜CD138免疫染色検査などがあります。患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な検査・治療プランをご提案いたします。どちらの検査が適しているかについても、詳しくご説明いたします。

動画