
PICSI(先進医療:ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)
PICSIはヒアルロン酸に結合する成熟精子のみを選びICSIに用いる技術で、DNA損傷の少ない精子を使用することで、受精胚の質や着床率の改善が期待される先進医療です。
PICSIとは
PICSI(Physiological ICSI、ピクシー)とは、ヒアルロン酸に結合する能力を利用して、成熟した精子を選別し、顕微授精(ICSI)に用いる技術です。
成熟した精子は、卵子の外層に多く含まれるヒアルロン酸と自然に結合する性質があります。PICSIではこの特徴を利用し、ヒアルロン酸に結合する精子のみを選んで顕微授精に使用します。
これにより、未成熟な精子やDNAに損傷を持つ精子を避け、受精胚の質や着床率、出生率の向上が期待されます。
ヒアルロン酸との結合
ヒアルロン酸結合能は、精子の成熟度の指標とされています。結合できない精子は、DNA断片化率が高く、流産リスクの上昇と関連することが報告されています。
対象となる方
- 顕微授精(ICSI)を複数回行っても良好な結果が得られていない方
- 胚発育や着床に課題があり、精子要因の関与が疑われる方
- 精子DNAの質に不安がある方(たとえばDFIが高いなど)
実施方法
- 採精された精液を、ヒアルロン酸を含む専用のPICSIディッシュに滴下します。
- 結合能力のある精子はヒアルロン酸に付着し、頭部が重くなって運動が停止していきます。
- 顕微鏡下で、このヒアルロン酸に結合した成熟精子を選び、ICSI(顕微授精)に用います。
通常のICSIと同様の工程で、胚培養士が精子を選定・注入しますが、精子の選別方法が異なる点が最大の特徴です。
費用について
通常の保険診療と併せて実施することが可能ですが、先進医療のため患者さまの全額自己負担となります。ただし、民間の医療保険(先進医療特約)や都道府県などの助成制度を利用することで負担を軽減できることがあります。
先進医療に係る費用:24,200円(患者全額自己負担)
注意事項
治療の有効性は現在も検討が進められており、誰にでも有効な治療とは考えられていません。当院では患者さまの状況に応じて個別に治療の適応を判断し、十分な説明を行った上で実施いたします。
代替技術として、強拡大顕微鏡を用いたIMSI(先進医療:形態学的精子選択術)などもあり、患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な治療方法をご提案いたします。