Treatments診療内容
Falloposcopic Tuboplasty

FT(卵管鏡下卵管形成術)

FT(卵管鏡下卵管形成術)は、閉塞した卵管を再開通させる日帰り手術で、タイミング法や人工授精での妊娠が期待できるようになります。腟からの操作のためお腹に傷がつかず、術後の痛みも軽く翌日からの仕事復帰も可能です。

FTとは

FT(卵管鏡下卵管形成術:falloposcopic tuboplasty)は、近位卵管の高度な狭窄、閉塞部位を再開通させ、一般治療(タイミング法・人工授精)による妊娠率を改善させる手術です。当院では、静脈麻酔を行い日帰りでの手術を実施しています。

手術の適応

卵管疎通性検査で、片側あるいは両側の卵管閉塞、または高度の狭窄所見が卵管近位部に確認された場合が適応となります。
他院からの紹介状を持参された場合や、他院画像を持参され当院で再度画像を読影し上記診断に至った場合は、卵管疎通性検査を省略することが可能です。
なお、卵管遠位の狭窄病変や卵管水腫病変には適応となりません。

手術による妊娠率の改善効果・代替治療

FTによって卵管を再開通させることができれば、それまで無効であったタイミング法や人工授精による妊娠が十分に期待できます。これまでの報告では治療後2年間で約30〜35%に妊娠が成立し、平均妊娠成立までの期間は7〜8ヶ月です。
ただし、卵管障害の程度によっては、10%未満ですが卵管の再開通ができない場合があります。また、再開通に成功しても術後早期に卵管の再閉塞や再狭窄が生じる場合もあります。卵管内の狭窄が解除されても、卵管内部の構造は元に戻らず機能が回復しないこともあります。観察所見によっては、短期間で高度生殖医療へのステップアップをおすすめする場合があります。
卵管が片側閉塞している場合では、疎通性がある卵管からの妊娠を期待することは可能です。ただし、対側卵巣からの排卵が起こった場合は妊娠率が低下します。手術を行わずに体外受精治療を実施することも選択肢となります。

日帰り手術のメリット・デメリット

メリット

  • 腟から操作する手術のためお腹に傷がつきません。
  • 術後の痛みが軽く、出血も少ないとされています。
  • 入院不要なので経済的で、合併症がない限り翌日以降の早期仕事復帰も可能です。

デメリット

  • 併存疾患によっては当院での手術が困難な場合があります。
  • 非常に稀ではありますが、手術を開始した後に当院での手術継続が不可能と判断した場合には手術途中でも中止することがあり、その場合は連携先の医療機関をご紹介いたします。
  • 稀ではありますが、手術を開始した後に合併症が生じた場合には、高次医療機関に搬送する場合があります。

FTの合併症

出血

通常は出血の少ない手術です。

細菌感染

術後子宮内に感染が起きることがあります。手術時・手術後は細菌感染予防のための抗菌薬を投与します。

疼痛

術後の疼痛は軽度なことが多いですが、疼痛があれば鎮痛剤を投与します。

卵管穿孔

卵管に穴が開くことがあります。卵管カテーテルは1mm程度と細く、穿孔が起きた場合もほとんどは待機観察で経過をみることができます。

これらの合併症が起こる頻度は極めて低く、また起こった場合も経過観察となる場合がほとんどです。

手術までの流れ

手術の日程を決定いたします。
月経終了直後から排卵日までが手術に適した時期になりますが、手術日がこの時期に該当しない場合は、子宮内膜の状態を調整する内服薬を使用することがあります。月経様の出血があっても妊娠していることがあるため、妊娠していないことの確認が必要です。手術までは避妊していただきます。
手術前に血液検査・心電図・胸部レントゲン検査を実施します。
手術前に医師より手術の説明を行います。

手術当日の流れ

  1. 手術開始1〜2時間前に来院していただきます。
  2. 経腟超音波検査で子宮の状態を確認します。
  3. 着替え、点滴などの準備を行います。
  4. 手術室に移動し、麻酔(静脈麻酔・局所麻酔)を実施します。
  5. 手術時間は両側でも約30~40分前後です。

子宮鏡の実施

当院では子宮の向き、大きさを確認するために先に子宮鏡を行います。子宮鏡を行うことで卵管口の場所を同定し、その後のFT操作をスムーズに行うことができます。

FTカテーテルの挿入

卵管鏡をセットしたFTカテーテルを子宮内に挿入し、卵管鏡で卵管の入り口を確認します。

バルーンによる拡張

卵管の入り口が確認できれば、その中にFTカテーテルのバルーンを挿入します。このバルーンを2〜8気圧で加圧しながら閉塞・狭窄部位を押し広げていきます。

卵管内腔の観察

障害部位を開通し、バルーンが伸び終わったところ(最大11cm)から、バルーンを引き戻しながら卵管内腔面を観察していきます。

超音波による評価

片側終了するごとに超音波を行い、卵管の拡張がないかなど評価を実施します。開通した直後の超音波を行うことで卵管水腫が見つかることもあり、このような場合はステップアップが必要となります。

  1. 手術後は2時間ほど休憩していただきます。
  2. 目が覚め、ご自身で移動が可能になりましたら、術後診察(経腟超音波検査)を行います。
  3. 医師より手術の説明を行います。

手術後の診察

手術後2週間後に術後診察を実施します。
経腟超音波検査で子宮の状態を確認します。
手術で摘出した病変の病理組織診断の結果を医師より説明いたします。

注意事項

帰宅時、麻酔が覚めきらないときがあるため、ご自身で運転をしての来院は避けてください。当院では内膜症の有無、年齢、卵巣予備能や狭窄の部位などから症例別に説明させていただき、患者さま一人ひとりの状況に応じて、最適な検査・治療プランをご提案いたします。