
流産手術
流産手術は、子宮内流産組織を安全に摘出する日帰り手術で、WHO推奨のMVA法(手動真空吸引法)を採用しています。やわらかいプラスチック製器具を使用するため痛みが少なく、子宮への負担も軽減され、手術後は次の妊娠準備を2〜3ヶ月を目処に再開できます。
流産とは
流産とは、妊娠22週より前に妊娠が自然に終了してしまうことを指します。全妊娠の約15%で流産に至るとされており、流産全体の80%前後は妊娠12週未満の早い時期に起こります。流産の多くは、受精卵側の染色体異常など、避けられない要因によって起こります。
流産には、子宮内の妊娠組織が完全に排出される「完全流産」、妊娠組織の一部が子宮内に残る「不全流産」、胎児の発育・心拍が認められずに子宮内にとどまっている「稽留流産」の状態があります。「不全流産」「稽留流産」の場合、流産手術を行うのか、自然に排出され完全流産になるのを待機するのか、経過をみて判断いたします。自然待機をしていても、1~2週間自然排出しない場合は流産手術を検討します。
流産手術とは
流産手術は、手術器具を子宮内に挿入し、子宮内にある妊娠組織を摘出する手術です。妊娠初期の流産手術では、一般的に「掻爬法」と「吸引法」があります。当院では、「吸引法」のうち、特に子宮や身体への負担が少なくWHO(世界保健機構)にも推奨されている「MVA法(手動真空吸引法)」を採用しています。
手動式の吸引器(プラスチック製のシリンジのような器具)を用いて、子宮内の内容物を吸引・除去する方法です。プラスチック製のやわらかいカニューレを使用するため、痛みが少なく、また子宮を傷つけるリスクや合併症が少ない方法です。
当院では、静脈麻酔を行い日帰りでの手術を実施しています。
流死産胎児・絨毛染色体検査について
2回目以降の流産では、不育症検査として流死産胎児・絨毛染色体検査を実施することが可能です。この検査には保険診療で行う「流死産・胎児絨毛染色体検査(G分染色法)」と、先進医療で行う「次世代シーケンサーを用いた流死産絨毛・胎児組織染色体検査」があります。検査を実施する場合は、別途遺伝カウンセリングを受けていただく必要があります。
手術による効果・代替治療
子宮内にある妊娠組織がなくなることにより排卵が再開し次の妊娠準備を始めることができます。自然排出に比べて排出までの時間短縮、排出後の遺残リスク軽減が期待されます。
流産後一定期間(2週間程度)で自然排出することも考えられるため、流産後すぐに流産手術を決めず一定期間経過をみることは可能です。流死産胎児・絨毛染色体検査を行う場合は摘出する組織の状態が重要であるため流産手術を行うことが一般的です。
流産手術の合併症
出血
通常は出血の少ない手術です。
細菌感染
術後子宮内に感染が起きることがあります。手術時・手術後は細菌感染予防のための抗菌薬を投与します。
疼痛
術後の疼痛は軽度なことが多いですが、疼痛があれば鎮痛剤を投与します。
子宮穿孔
非常にまれですが、手術に用いた器具により子宮に穴があいてしまうことがあります。子宮穿孔により多量出血や他臓器損傷が起きる可能性があります。高次医療機関に搬送し修復術が必要となる可能性があります。
子宮内容遺残
術後に妊娠成分の一部が子宮内に残る場合があります。ほとんどは、術後自然に排出されますが、自然排出までに時間がかかる場合や、遺残が多い場合などは、子宮鏡下摘出術を行う場合があります。
手術までの流れ
- 手術の日程を決定いたします。
- 手術前に血液検査・心電図・胸部レントゲン検査を実施します。
- 手術前に医師より手術の説明を行います。
手術前に出血が始まった場合は連絡をいただき、手術を早める、もしくは自然排出していた場合には手術を中止するなどの判断を行います。
手術当日の流れ
- 手術開始1〜2時間前に来院していただきます。
- 経腟超音波検査で子宮の状態を確認します。
- 着替え、点滴などの準備を行います。
- 手術室に移動し、麻酔(静脈麻酔)を実施します。
- 手術時間は5~10分前後です。
- 手術後は1~2時間ほど休憩していただきます。
- 目が覚め、ご自身で移動が可能になりましたら、術後診察(経腟超音波検査)を行います。
- 医師より手術の説明を行います。
手術後の診察
手術後2週間後に術後診察を実施します。
経腟超音波検査で子宮の状態を確認します。
手術で摘出した組織の病理組織診断の結果を医師より説明いたします。
流死産胎児・絨毛染色体検査を実施した場合は、術後4週間後に夫婦で遺伝カウンセリングを受診していただき、結果を医師より説明いたします。
注意事項
帰宅時、麻酔が覚めきらないときがあるため、ご自身で運転をしての来院は避けてください。当院では患者さま一人ひとりの状況に応じて、流産術後の最適な検査・治療プランをご提案いたします。