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ノンメディカル(社会的)卵子凍結について

ノンメディカル(社会的)卵子凍結は、将来の妊娠に備えて卵子を保存しておく方法です。35歳未満での凍結が推奨され、年齢や個数により異なりますが卵子1個あたり4.5〜12%の出生率があります。さまざまなメリット・デメリットをふまえたうえで、将来の妊娠の選択肢を広げる方法の一つです。

卵子凍結とは

卵子凍結とは、将来の妊娠に備えて、卵子を体外に取り出して凍結保存しておく方法です。
卵子凍結には2つの種類があります。がん治療などにより卵巣の働きに影響を与え、将来子供を持つことが難しくなる可能性があるため、病気の治療前にあらかじめ卵子を採取して凍結保存する「医学的適応」の卵子凍結と、健康ではあるものの今は妊娠を選択しない女性が行う「ノンメディカル(社会的)」な卵子凍結があります。
年齢とともに(特に35歳以上で)起こる卵巣予備能や卵子の質の低下により、生殖機能(妊娠しやすさ)は低下してしまいます。そうなる前に、将来の妊娠に備えて「ノンメディカルな卵子凍結」という選択肢があります。

体外受精との違い

卵巣を刺激し、卵胞を発育させて排卵する前に採卵によって卵子を回収するところまでは共通していますが、凍結する時の状態が異なります。
不妊治療として行われる体外受精では、回収した卵子をパートナーの精子と受精させ、少し成長させて胚移植(子宮内に戻す)できる状態の受精卵(胚)として凍結保存します。
ノンメディカル卵子凍結では、採卵により回収した卵子を精子と受精させる前の状態で凍結保存します。パートナーの決まっていない女性が主たる対象ですが、パートナーがいる女性でも行うことは可能です。

卵子凍結が「研究段階(experimental)」ではないと正式に認められたのは2012年10月です。この決定は、ASRM(American Society for Reproductive Medicine)とSART(Society for Assisted Reproductive Technology)によって発表されました。ただし、不妊治療カップルにとっては胚凍結のほうが安定した治療であると考えられています。

ノンメディカル卵子凍結のメリット・デメリット

メリット

女性がキャリア形成など様々な理由で妊娠を先延ばしにしたい場合、卵子凍結をしておくことで、ご自分の生殖能力を保存しておくことが可能です。将来、妊娠・出産を望んだ時に、体外受精により年齢が若い状態の凍結卵子での妊娠を目指すことができます。
最近では企業の福利厚生として支援するところや、費用を助成する自治体も出てきており、多くの女性がノンメディカル卵子凍結を選択しやすくなってきました。

デメリット

ノンメディカル卵子凍結は病気の治療ではなく、将来の妊娠の可能性を保存しておくものですので、自費診療になります。ノンメディカル卵子凍結を支援する環境は徐々に増えてきてはいますが、凍結費用のほか、毎年発生する保管料もありますので、費用面では負担がかかります。
卵子凍結は、通常の体外受精と同等の一定のリスクを伴います。排卵誘発剤の使用による卵巣過剰刺激症候群(重症:0.8〜1.5%)、採卵に伴う腟壁の多量出血(0.1%)、腹腔内出血(0.04〜0.22%)、骨盤内感染(0.3〜0.6%)、他臓器損傷(0.1%)です。(生殖医療の必修知識より)

妊娠・出産が保証されるわけではありません

卵子凍結が必ずしも将来の妊娠・出産に結びつくわけではないということも理解しておく必要があります。いざ卵子を使おうという時には、融解した卵子が受精できる状態になっているか、実際正常に受精するかどうか、受精卵が移植できる状態まで成長するかどうか、という関門があります。また、胚が着床しても妊娠初期に流産する可能性もあります。

卵子凍結した場合の将来の妊娠成績

年齢や個数によって成績は変わりますが、全体的には、卵子1個あたり4.5〜12%の出生率です。
卵子凍結時の年齢が38歳未満、もしくは卵子融解時の成熟卵子数が20個以上の場合には、累積生児出生率は50%以上という報告もあります。

何個の卵子を凍結することが望ましいの?

凍結時年齢別の卵子凍結個数別にみた一人出産できる推測割合

日本産科婦人科学会動画「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」より引用

参考文献
R H Goldman, et al.Hum Reprod. 2017 Apr 1;32(4):853-859. doi: 10.1093/humrep/dex008.
年齢・個数別に、少なくとも一人出産できる割合をSupplementary Table SIIより抽出

年齢別累積生児獲得率

日本産科婦人科学会動画「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」より引用

参考文献
A Cobo,et al.Hum Reprod. 2018 Dec 1;33(12):2222-2231. doi: 10.1093/humrep/dey321.
ノンメディカル卵子凍結と、がん・生殖の卵子凍結の臨床成績が変わらないという論文のノンメディカル卵子凍結の臨床成績Figure 1より抽出
35歳未満の平均年齢は32.6歳、35歳より上の平均年齢は38.7歳

年齢が若い方が凍結した卵子数が少なくても妊娠できる可能性が高くなりますが、高齢になると20個以上の卵子を凍結しても一定以上妊娠率が上がらないと言われています。

ノンメディカル卵子凍結シミュレーション

1回の採卵で何個くらい卵子を凍結できるか、また、凍結保存した卵子から将来赤ちゃんを授かる確率はどれくらいか、卵子凍結の費用はどれくらいかかるのか、当院ではシミュレーションツールを作成しました。
リンクより必要事項を入力してお試しください。
https://kameda-ivf.com/CryoPreservation.php

何歳までに卵子凍結することが望ましいの?

40歳未満を推奨しています

ただし、移植時年齢の上昇に伴う生児出生率の低下や妊娠合併症リスクの上昇は卵子凍結では解決できないため、できるだけ早い時期(できれば35歳以下)での卵子凍結や移植をおすすめします。

実際の方法・治療の流れ

  1. 月経前に事前スクリーニング検査を行います。
  2. 月経3日目以内に診察し、そこから10回程度の自己注射(来院でも可能)を行います。
  3. 月経10〜11日目頃に卵胞をチェックし、発育してきていたら、採卵日を決定します。月経13〜14日目頃に採卵を行います(※月経周期により変動があります)
  4. 採卵後1週間程度で卵巣の状態を確認し、凍結結果をお伝えします。(※卵巣の腫れ具合により、その間でも診察が入ることがあります)

卵巣刺激方法 その1

卵巣刺激方法 その2

参考情報

日本産科婦人科学会では、「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」というHPと動画を提供していますので活用ください。

日本産科婦人科学会HP
https://www.jsog.or.jp/medical/865/