培養

2025.08.09

卵の移動に使う道具について

卵の移動に使う道具について解説します。卵の移動にはパスツールピペットと呼ばれるガラス製のピペット(少量の液体を移動させるための器具)からガスバーナーの炎を使って溶かして引き伸ばして自作します。

もし、卵よりも細いピペットの中に卵を吸うと変形して押しつぶされて物理的なダメージを受け、最悪の場合、破裂します。

卵子の外径は160µmなので、ピペットの内径は160µmよりも大きいものを使わなければなりません。したがって、ピペットを自作した後は内径を必ず調べる必要があります。これには顕微鏡の接眼レンズ(覗くところ)にスケールメーターと呼ばれる定規の目盛のようなものが印字されたガラスをはめ込んで使います。

我々が使っている顕微鏡の倍率は最小が7倍、最大が115倍です。写真では0.7と11.5となっていますが、接眼レンズが10倍なので、0.7×10倍=7倍、11.5×10倍=115倍となります。

見る倍率によって1目盛の実測値は変わりますので、ピペットの内径を調べる時は必ず115倍の最高倍率の目盛で見るようにしています。写真の中に写っているピペットの内径はガラスの厚みを除いた内側となり、スケールメーターの目盛では24目盛になります。 

当クリニックの顕微鏡の115倍で見たときの24目盛、実際は何μmとなるでしょうか? 

次回は、この24目盛の実際の大きさが何μmとなるのかを調べるための目盛の校正について説明致します。

文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# ピペット

亀田IVFクリニック幕張 生殖医療事業管理部 培養管理室長

平岡 謙一郎

亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士。広島県立大学大学院修了(博士)。体外受精の中心となる受精・培養・凍結について専門知見に基づき紹介している。

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