体外受精

2024.05.31

MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法の比較(Fertil Steril. 2024)

はじめに

MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法の比較した報告をご紹介します。

ポイント

全胚凍結を前提とした場合、MPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法は生殖医療成績に差がなく、通院回数・注射回数・費用の面でPPOS法が、ベネフィットが高い可能性があります。

引用文献

Annalyn M Welp, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):806-813. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.026.

論文内容

2020~2023年に不妊治療として自家体外受精(IVF)を受ける18~44歳の全診断の患者と対象としてMPAを用いたPPOS法とGnRHアンタゴニスト法を比較した単生殖医療施設で行われたコホート試験です。評価項目は早発排卵率、回収卵子数および有効胚数、胚質、妊娠率、様々なベネフィットとしました。

結果

MPAを用いたPPOS法を受けた418名(MPA群)についてプロスペクティブデータを収集し、419名の過去のGnRHアンタゴニスト法を実施した患者群(コントロール群)と比較した。年齢は群間で同程度でした(35.6±4.6歳 vs 35.7±4.8歳;P = 0.75)。早発排卵はMPA群では0例であったのに対し、コントロール群では5例でした(0% vs. 1.2%;RR=0.09;95%CI、0.01、1.66)。回収卵子数(14.3±10.2個 vs. 14.3±9.7個;P = 0.83)、胚盤胞数(4.9±4.6個  vs. 5.0±4.6個;P = 0.89)、または正常核型胚盤胞数(2.4±2.6個 vs. 2.2±2.4個;P = 0.18)は、MPA群とコントロール群でそれぞれ差は認められませんでした。臨床的妊娠率は同程度でした(70.4% vs. 64.2%;RR=0.92;95%CI、0.72、1.18)。卵巣刺激期間や総FSH投与量に差は認めませんでした。MPA群では、薬剤費が平均491±119ドル節約され、モニタリングの回数が平均1回少なく(4.4±0.9 vs. 5.6±1.1;P<.01)、1周期あたりの注射回数が5.0±1.2回少なくなりました。年齢と卵巣予備能で調整した場合、移植可能胚の有無に影響を及ぼしませんでした(76.6% vs. 73.4%;aRR=1.05;95%CI、0.94、1.14)。

私見

FSH1日投与量は400単位前後であり、国内投与量よりやや多い設定となっています。PPOSのMPA量は10mg/日、GnRHアンタゴニスト法のアンタゴニスト開始時期は血清E2 400pg/mlもしくは主席発育卵胞が12-14mmになった場合のflexible法としています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# GnRHアンタゴニスト

# PP(PPOS)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

採卵周期のゴナドトロピン種類とFET累積出生率(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.08.28

体重・BMI・体脂肪率はfollitropin alfa固定投与時の血清FSH動態・採卵成績との関連(日本受精着床学会雑誌 2025)

2026.08.27

ART周期におけるフォリトロピンデルタ・アルファ・hMGの有効性比較(Reprod Med Biol. 2026)

2026.08.24

高齢不妊女性のIVFにおけるGnRHアンタゴニスト法とPPOS法の比較(Front Endocrinol. 2026)

2026.08.04

PPOS vs. GnRHアンタゴニスト法 臨床アウトカムと単一細胞解析からの検証(Reprod Biomed Online. 2025)

2026.08.03

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11