
はじめに
ビタミンD不足は妊娠前・期における重要な栄養課題であり、母体の血中25(OH)D濃度は児の骨形成や骨量に関連することが観察研究で示されています。しかし、妊娠中のビタミンD補充が実際に児の骨量を改善するかどうかの確証は得られていませんでした。今回、英国で実施された大規模二重盲検無作為化比較試験MAVIDOSの結果をご紹介します。
ポイント
妊娠中のビタミンD 1000IU/日補充は、全体では新生児の骨密度に差はありませんが、冬季分娩において有意な改善効果を認めました。
引用文献
Cooper C, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 May;4(5):393-402. doi: 10.1016/S2213-8587(16)00044-9.
論文内容
2008年10月6日から2014年2月11日までの間に、妊娠12週時点で血清25(OH)D値が25-100nmol/l(10-40ng/mL)の妊婦を、妊娠14週から分娩まで1000IU/日(25μg/日)のコレカルシフェロールまたは一致したプラセボに無作為割り付けしました。血清25(OH)D値は妊娠14週と34週で測定しました。生後2週間以内のDXA法による新生児全身骨ミネラル量(n=665)を主要評価項目としました。
結果
1000IU/日(25μg/日)コレカルシフェロールを投与された母体から生まれた児とプラセボを投与された母体から生まれた児の新生児全身骨ミネラル含有量に差は認められませんでした[61.6g (95%CI: 60.3, 62.8g) vs 60.5g (95%CI: 59.3, 61.7g)、p=0.21]。
しかし、サブグループ解析において、治療群と出生季節の相互作用は統計的に有意であり(p=0.04)、冬季(12月から2月)の分娩では治療効果の大きさは実質的に大きく[平均差5.5g (95%CI: 1.8, 9.1, p=0.004)]、他の季節よりも顕著でした。冬季出生児では同様に全身骨面積(平均群間差=11.5cm², p=0.05)、骨密度(平均群間差=0.01g/cm²; p=0.04)、身長補正骨ミネラル含有量(平均群間差=3.7g, p=0.03)でも改善を認めました。
私見
いつまでビタミンDを摂取すればいいのか? これは不妊治療患者さまに頻繁に聞かれる質問です。費用負担や悪阻時のサプリメントが辛いということもあるのかと思います。ただ、出生率の向上という観点だけではなく児の予後という観点から最近は妊娠中継続をお勧めしています。
今回の研究テーマと同様の観察研究では、Javaid MK, et al. (Lancet 2006)が妊娠後期の母体25(OH)D<25nmol/l(<10ng/mL)で9歳時の児の全身骨面積、BMC、BMDが低下すると報告し、Viljakainen HT, et al. (J Clin Endocrinol Metab 2010; Osteoporos Int 2011)も母体ビタミンD状態が新生児および18ヶ月時の骨変数と関連することを示していました。一方で、Lawlor DA, et al. (Lancet 2013)やPrentice A, et al. (Acta Paediatr 2009)では関連を認めず、介入研究の必要性が指摘されていました。
本研究の1000IU/日(25μg/日)摂取にて、母体25(OH)D値を34週時点で68.2±21.9nmol/l(27.3±8.8ng/mL)まで上昇させ(プラセボ群43.4±22.4nmol/l、17.4±9.0ng/mL)、25(OH)D不足(<50nmol/l、<20ng/mL)の頻度を治療群16.6% vs プラセボ群63.5%まで減少させました。過剰状態のリスクとして高カルシウム血症(≥2.75mmol/l)は観察されず、安全性が確認されました。
季節性の治療効果は、プラセボ群の冬季・春季分娩で14週から34週への25(OH)D低下が認められた一方、治療群では同時期の低下が阻止されたことから説明できます。
この研究 追跡研究がありますので別途ご紹介いたします。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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