治療予後・その他

2026.01.06

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

はじめに

帝王切開後の経腟分娩(VBAC)において、子宮破裂は重大な合併症の一つです。一般的に帝王切開歴があると子宮破裂リスクは高まりますが、興味深いことに複数回のVBAC成功経験がある女性では、むしろ破裂リスクが低下することが示唆されています。帝王切開歴1回の女性でVBAC経験回数と子宮破裂リスクの関係を大規模に調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

帝王切開1回後の女性では、VBAC成功経験が増えるほど子宮破裂リスクが劇的に減少し(初回VBAC:0.64% → 5回以上VBAC経験:0%)、経験が安全性を高めることが判明しました。

引用文献

Kolp-Asis S, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025. doi: 10.1016/j.ajog.2025.07.004.

論文内容

帝王切開歴1回の女性におけるVBAC経験回数と子宮破裂リスクの関係を調査した2011年11月から2024年1月のレトロスペクティブコホート研究です。イスラエルの医療センターで妊娠24週以降の単胎妊娠128,135例を解析しました(帝王切開歴1回:9,932例、帝王切開歴なし:118,203例)。複数回帝王切開歴、多胎妊娠、分娩試行なしの予定帝王切開は除外しました。2015年以降のデータ7,193例でVBAC経験回数による詳細解析を実施しました。

結果

48例の子宮破裂を確認しました。帝王切開歴1回の女性では破裂率0.383%、帝王切開歴なしでは0.008%と49倍の差がありました。注目すべきは、帝王切開歴1回の女性において、VBAC経験回数が増加するほど破裂リスクが劇的に減少したことです。VBAC未経験者(初回VBAC挑戦)では破裂率0.637%と最も高く、1回VBAC成功後は0.281%と半分以下に減少し、2回成功後は0.196%、4回成功後は0.178%となりました。5回以上のVBAC成功者では破裂例を1例も認めませんでした(0.000%)。統計学的にVBAC経験回数と破裂リスク間に有意な逆相関を認めました(P<0.001)。一方、帝王切開歴のない女性では、経産回数増加に伴い破裂リスクが上昇傾向を示しました(経産0回:0.000% → 経産8回以上:0.019%)。

私見

「帝王切開後、一度VBAC成功したからと言って潜在性子宮破裂が隠れているかもしれないから次のVBACも破裂リスクは危険だよ」と慣習的に説明してきたたちばからすると、とても有意義なデータだと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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