はじめに
PPOS法は卵巣予備能がnormal〜high responderの方にはGnRHアンタゴニスト法と大差ないというのがコンセンサスですが、poor responderでは意見がわかれます。今回、Poor responderにおけるfPPOS法と GnRHアンタゴニスト法を比較したランダム化比較試験をご紹介いたします。
ポイント
Poor responderにおいて、fPPOS法はGnRHアンタゴニスト法と比較して非劣性を示すことができませんでした。
引用文献
He Cai, et al. Hum Reprod. 2024. doi: 10.1093/humrep/deae286
論文内容
全胚凍結を行うpoor responderにfPPOS法とGnRHアンタゴニスト法との累積出生率を比較したランダム化比較試験です。2020年7月から2023年6月に、484名の参加者を1:1の割合で無作為に割り付けました。主要評価項目は、無作為化後12ヶ月以内の女性あたりの累積出生率(非劣性マージン-12.5%)としました。
poor responderが予想される不妊女性(40歳未満、AFC<10個、基礎FSH<12 mIU/ml)を対象としました。刺激抑制方法は主席卵胞が14mmに達した時点でMPA(10mg)またはGnRHアンタゴニスト(0.25mg)を1日1回投与し、トリガー日まで継続しました。全ての生存胚は両群とも凍結保存し、その後の凍結融解胚移植に使用しました。解析はper-protocolとしました。
結果
fPPOS群の累積出生率は44.4%(96/216)、GnRHアンタゴニスト群は48.9%(114/233)でした[リスク比0.91(95%CI:0.74-1.11)、リスク差-4.5%(95%CI:-13.7, 4.7)]。この差は非劣性基準(-12.5%)を満たしませんでした。卵子および胚のパラメータは両群間で有意差を認めませんでした。
その他のポイント:
– 最初の胚移植における生産率:fPPOS群32.9%(71/216)vs GnRHアンタゴニスト群34.3%(80/240)
– 少なくとも1回の胚移植実施率:fPPOS群70.8%、GnRHアンタゴニスト群78.5%
– 凍結胚を得られなかった割合:fPPOS群15.3%、GnRHアンタゴニスト群9.9%
私見
非劣性試験では、新しい治療法が従来の治療法と比べて「著しく劣っていない」ことを示すために、信頼区間の下限が非劣性基準をクリアしないといけないんですね。勉強になりました。
PPOSは過去にも多くのブログで取り上げています。PPOS一辺倒ではなく、症例を選んだ実施が好ましいと考えています。
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- 卵巣予備能低下の人にはfPPOS法? GnRHantagonist法?(Hum Fertil (Camb). 2022)
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文責:川井清考(WFC group CEO)
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