体外受精

2025.02.06

Euploid胚移植後、低hCG値は胎児異常を予測?(J Assist Reprod Genet. 2024)

はじめに

血中hCG値は、妊娠判定に用いるルーチン検査です。今回、ニューヨーク大学の研究グループが、PGT-Aで染色体正常が確認された胚移植後の、このhCG値の臨床的意義について興味深い報告をしています。

ポイント

正常核型凍結融解胚移植後の胎児異常は、初期の血中hCG値が低値であることと関連している可能性があります。

引用文献

Heisler E, et al. J Assist Reprod Genet. 2024. Doi:10.1007/s10815-024-03325-0

論文内容

正常核型胚の凍結胚移植後の早期血清hCGレベルと胎児異常との関係を調査することを目的とした症例対照研究です。2010年1月から2021年12月の間に、単一生殖医療施設で、胎児異常が確認された10週以降の人工妊娠中絶例、または分娩時に異常が報告された症例を対象としました。対照群は、年齢および胚の日齢/グレードをマッチングさせた健常出生例としました。

結果

周期28日目(4週0日)と35日目(5週0日)の血清hCGレベルは、異常群で低値でした(28日目:152 vs 177.5 mIU/mL、p<0.04;35日目:3033 vs 3744 mIU/mL、p<0.05)。異常群では、初期hCGが低値(50 mIU/mL未満が6.4%、51-100 mIU/mLが20.5%、101 mIU/mL以上が73.1%)であり、対照群(それぞれ3.8%、10.3%、85.7%)と比較して差を認めました(p<0.02)。

しかし、28日目から35日目までのhCG上昇率には統計学的な差は認められませんでした(1758.0% vs 2097.0%、p=0.23)。

私見

hCGは胚盤胞の栄養外胚葉細胞から分泌されるホルモンです。胎盤の血管新生、血管形成、成長に関与します。
いままで、着床時期のhCGが低いと生まれる割合が低いとのみ、説明をしてきました。今回の結果をみると、低hCGで胎児異常が増えてきたことが原因なのかわかりませんが、注視して妊娠初期フォローアップする必要がありそうですね。特定の奇形タイプとhCG値の関連についても今後の研究課題と書いてあります。

今回の報告でのhCGが低く分娩に至った最小値は、異常群:19.1 mIU/mL(心臓、性腺、腹部の異常)、対照群:31 mIU/mLでした。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 胚移植(ET)

# hCG

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

胚の再凍結・再生検が凍結融解胚移植の妊娠予後に与える影響(Fertil Steril. 2025)

2025.06.23

ART妊娠初期の超音波測定における基準値特性(F S Rep. 2024)

2025.05.21

胚生検における細胞数が妊娠予後に与える影響(Hum Reprod. 2025)

2025.03.24

胚移植カテーテルへの胚残留が妊娠・出産に与える影響(Fertil Steril. 2025)

2025.03.03

胚透明帯除去による胚フラグメンテーション改善(F S Rep. 2024)

2025.02.14

体外受精の人気記事

卵巣反応性不良患者における自然周期と調節卵巣刺激の累積生児獲得率(J Assist Reprod Genet. 2025)

胚の再凍結・再生検が凍結融解胚移植の妊娠予後に与える影響(Fertil Steril. 2025)

受精卵・胚の形態評価に関する改訂ESHRE/ALPHAコンセンサス(Hum Reprod. 2025)

クロミフェン耐性PCOS女性の経腟的卵巣多孔術によるIVF改善効果(J Assist Reprod Genet. 2024)

HRT周期凍結胚移植後の早期黄体補充中止でも生児獲得(当院報告:BMC Pregnancy Childbirth. 2024)

GnRHアンタゴニスト投与中の早発LHサージリスク因子(Fertil Steril. 2014)

今月の人気記事

NK細胞異常を有する反復妊娠不成立患者における免疫ブロブリン・イントラリピッド比較研究(当院関連論文)

2025.07.01

不育症に対する免疫グロブリン投与の有効性(J Reprod Immunol. 2025)

2025.07.02

卵巣反応性不良患者における自然周期と調節卵巣刺激の累積生児獲得率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.07.03

妊活男性のストレスと精巣機能(Fertil Steril 2025) 

2025.07.05

FGRに対する低分子量ヘパリン治療は妊娠期間を延長しない(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.06.25

抗酸化サプリメント高用量摂取のマウス精子を用いたリスク検証(F S Sci. 2025)

2025.07.04