はじめに
妊娠初期における子宮内妊娠の正確な診断は、適切な管理のために不可欠です。誤診は、望まれた妊娠継続の中断や、異所性妊娠などの発見の遅延につながる可能性があります。低いhCGで妊娠した3症例をまとめた報告をご紹介いたします。
ポイント
胚移植後にhCG上昇率が異常に低い患者に対しては、異所性妊娠の臨床的疑いを維持しつつ、保存的な管理を推奨します。
引用文献
Rauchfuss LK, et al. F S Rep.2021. doi: 10.1016/j.xfre.2020.11.006
Qizhen Zheng, et al. F S Rep. 2020 . doi: 10.1016/j.xfre.2020.04.005.
論文内容
<症例①>
30歳、G1P0、PCOS、5AAの単一凍結胚盤胞移植。
– hCG:131 → 160(22.1%上昇)→ 225(40.6%上昇)
– 妊娠高血圧症候群にて誘発・帝王切開、40週5日、3850g男児出生。
<症例②>
36歳、G3P0、BMI 35.6、男性不妊、4AA正常核型胚移植。
– hCG:30 → 37(23.3%)→ 74(100%)→ 190(156.8%)
– 妊娠高血圧症候群で経腟分娩、37週5日、3883g男児出生。
<症例③>
34歳、G3P1、男性不妊、PESA-ICSI、4AA新鮮単一胚移植。
– hCG:73 → 108(47.9%)→ 137(26.9%)→ 186(35.8%)
– 帝王切開、39週3日、3100g女児出生(Apert症候群と診断)。
<症例④>
30歳、P0、PCOS、3BB, 4ABの新鮮2個胚盤胞移植。
– hCG:11.6 → 40.1 → 247.3
– 帝王切開、3000g男児出生。
私見
妊娠早期診断にはPGT手技や先天障害との関連も言われています。
自然妊娠では気にしない時期のHCG値だからこそ、胚移植後のHCG判断は適切に情報提供する必要があるのだと思います。
<Morseらの報告>
hCGの2日間で35%上昇を基準とした場合:
– 感度83.2%、特異度70.8%、子宮外妊娠16.8%、正常妊娠7.7%誤分類。
– 3回目のhCG測定で誤分類率2.7%まで低下。
<Chungらの報告>
IVF妊娠391例のうち、生児獲得に至ったhCG上昇率:
– 24時間で平均50%、48時間で平均124%。
– 最低でも24時間14%、48時間30%上昇で生児獲得あり。
– 妊娠24日以降、hCG上昇は自然に緩やかに。
– 多胎妊娠でhCG値は高いが、上昇率には影響せず。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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