体外受精

2025.02.25

rLH+rFSH併用によるART卵巣刺激の有効性

(Cochrane Database Syst Rev. 2017)

はじめに

生殖補助医療では適切な卵巣刺激を行うことで治療成績が向上します。以前はHMG製剤を用いることが多かったのですが、最近ではHMG製剤の供給不足もありrFSHが主に使用されています。その結果、成長する卵胞が内因性LH以外に曝露されなくなるため、HMG製剤を用いた刺激と比較して相対的にLH比率が低下します。rLHを追加することで生児出生率が向上するかどうかが検討されています。本研究は、rLH+rFSH併用がrFSH単独と比較してART卵巣刺激における有効性と安全性にどのような影響を及ぼすかを評価したシステマティックレビューの更新版です。

ポイント

rLH+rFSH併用は、rFSH単独と比較して、生児出生率の明確な向上を示しませんでしたが、継続妊娠率の改善が示唆されました。

引用文献

Monique H Mochtar, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017 May 24;5(5):CD005070. doi: 10.1002/14651858.

論文内容

36件のRCT(8125名の女性)が含まれました。
・生児出生率:rLH+rFSH併用は有意な改善を示しませんでした(OR 1.32, 95% CI 0.85–2.06)。
・OHSS発症率:両群間で差なし(OR 0.38, 95% CI 0.14–1.01)。
・継続妊娠率:rLH併用で改善(OR 1.20, 95% CI 1.01–1.42)。
・流産率:差なし(OR 0.93, 95% CI 0.63–1.36)。
・治療キャンセル率:差なし(OR 0.77, 95% CI 0.54–1.10)。

サブグループ解析:
・GnRHアゴニスト vs アンタゴニスト:明確な差なし(P=0.19)。アンタゴニスト群でOHSSリスク低下の可能性。
・Poor responder群:継続妊娠率で有利(OR 2.06, 95% CI 1.20–3.53)。
・高齢女性:生児出生率に影響なし。ただし最適化への可能性も。

私見

rLH追加が生児出生率に与える影響は限定的でしたが、継続妊娠率の向上は重要です。
低卵巣反応群や高齢女性における有用性の可能性は否定できません。
ESHRE卵巣刺激ガイドライン2020では、rFSH単独とrLH併用に明確な差はなく、特定患者群に焦点を当てたさらなる研究が必要とされています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# ゴナドトロピン

# 卵巣刺激

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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