
はじめに
卵子凍結保存は、当初がんや婦人科手術などの医学的適応のために開発されましたが、後に妊娠を遅らせる目的での計画的治療として「非実験的」と見なされるようになりました。凍結卵子からの体外受精成績について初期の懸念がありましたが、研究により新鮮卵子と比較して同様の臨床妊娠・出生率が示されています。
ポイント
35歳未満では平均15個の成熟卵子で3個以上の正倍数胚盤胞を得られるが、38歳以上では倍増、40歳以上では3倍の卵子数が必要です。
引用文献
Namath A, et al. Fertil Steril. 2025;124(3):487-95. doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.04.023.
論文内容
少なくとも3個の正倍数胚盤胞を作成するために必要な成熟卵子数を決定することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2011年から2023年10月まで多施設生殖補助医療施設で自家凍結卵子を融解して体外受精を行ったすべての患者を対象としました。主要評価項目は少なくとも3個の正倍数胚盤胞を得るために必要な成熟卵子数でした。
結果
986名1,041融解周期を解析しました。患者を凍結時年齢で層別化しました。凍結成熟卵子数および利用可能な正倍数性胚盤胞数は、凍結時年齢の上昇とともに減少しました。35-40歳の患者は、>40歳または35歳未満の患者より着床前遺伝学的検査をより多く使用しました。少なくとも3個の正倍数胚盤胞を凍結することで潜在的出生の可能性を最適化するため、凍結時35歳未満の患者は平均15個のMII卵子を必要としました。この数は38歳以上女性で倍増し、>40歳女性で3倍になりました。
3個以上の正倍数性胚盤胞を得る確率別に必要な最小MII卵子数は以下の通りです:
- 70%以上の確率:<35歳15個、35-37歳21個、38-40歳28個、41-42歳34個、>42歳50個以上
- 50%以上の確率:<35歳12個、35-37歳16個、38-40歳21個、41-42歳25個、>42歳44個
- 90%以上の確率:<35歳22個、35-37歳30個、38-40歳41個、41-42歳49個、>42歳50個以上
凍結MII卵子数あたりの潜在的出生も解析し、これも年齢とともに増加し、35歳未満の凍結時で融解MII卵子あたり0.13の予想出生、40歳超では0.04の予想出生でした。
私見
本研究は卵子凍結における年齢の重要性を定量的に示した重要な報告です。Cascante SD, et al. Fertil Steril. 2022の15年間605周期解析では38歳未満かつ20個以上の成熟卵子で50%以上の出生率を報告しています。
当院HPのこちらのページも参考になさってください。
https://wfc-mom.jp/kameda-ivf-makuhari/treatments/sef/
文責:川井清考(WFC group CEO)
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