
はじめに
妊娠期のビタミンD状態が胎児および子どもの骨格発達に与える影響について多くの研究が行われています。今回、英国MAVIDOS試験の6-7歳時追跡結果により、妊娠期ビタミンD補充の子どもの骨密度への持続的効果を調査した報告をご紹介いたします。
ポイント
妊娠期1000 IU/日ビタミンD補充により子どもの6-7歳時骨密度が有意に増加し、4歳時から持続する効果が確認されました。
引用文献
Moon RJ, et al. Am J Clin Nutr. 2024 Dec;120(6):1134-1142. doi: 10.1016/j.ajcnut.2024.09.014.
論文内容
妊娠期ビタミンD補充が子どもの6-7歳時骨密度に与える影響を調査したMAVIDOS研究の追跡調査です。MAVIDOS無作為化比較試験では、妊娠14週未満の単胎妊娠で血清25(OH)D値25-100 nmol/lの妊婦を、英国3病院で妊娠14-17週から分娩まで1000 IU/日コレカルシフェロールまたはプラセボに無作為割り付けしました。サウサンプトンで出産した正期産児を4歳および6-7歳時の小児追跡調査に招待し、全身骨塩量(WBLH)および腰椎のDXA測定を実施しました。年齢、性別、身長、体重、母乳摂取期間、6-7歳時ビタミンD使用で調整した線形回帰分析を行いました。
結果
454名の小児が6-7歳時に追跡され、447名が使用可能なDXA測定を受けました。妊娠期コレカルシフェロール補充により、プラセボ群と比較してWBLH骨塩含有量(0.15 SD、95% CI:0.04, 0.26)、骨密度(0.18 SD、95% CI:0.06, 0.31)、骨密度見かけ値(0.18 SD、95% CI:0.04, 0.32)、除脂肪体重(0.09 SD、95% CI:0.00, 0.17)が高値を示しました。妊娠期コレカルシフェロールの骨に対する効果は4歳時と6-7歳時で同様でした。
私見
MAVIDOS研究では出生時には効果がほぼありませんでした。それが、4歳以降に効果が現れ持続することはDOHaD仮説のわかりやすい一例だと思っています。
骨密度が増加した考えられる機序として、①新生児期25(OH)D状態改善による生後数ヶ月のカルシウム吸収促進、②母乳中ビタミンD含量増加による間接効果、③エピジェネティック機構による骨の機械的負荷応答性改善が挙げられます。
重要な交絡因子として、授乳期間がコレカルシフェロール群で有意に長く(6ヶ月 vs 4ヶ月、p=0.01)、6-7歳児のビタミンD使用もコレカルシフェロール群でやや高率でした(46.2% vs 37.6%、p=0.07)。. 母親の健康意識の差(研究によりビタミンDの重要性を認識し子供にも補充を継続)、医療機関からの継続指導、研究に参加される高インテリジェンス集団というのが児へのビタミンD補充率の高さにつながっているのかもしれません。調整因子として入っていますがlimitationとしては払拭しきれないものですね。
それにしてもエビデンスに基づいた栄養介入、しっかり学び続けていきたいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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