
はじめに
OC/LEPは広く使用されていますが、含有ホルモンの種類による乳がんリスクの違いは明確ではありませんでした。乳がんの発生率は世界的に上昇しており、特に閉経前女性で顕著です。エストロゲンが乳がんを促進することは確立されていますが、プロゲステロンや合成プロゲスチンの役割については議論が続いています。今回、スウェーデンの全国規模のコホート研究で、200万人以上の思春期女性および生殖年齢女性を対象に、ホルモン性避妊薬の種類別に乳がんリスクを詳細に調査した研究をご紹介いたします。
ポイント
デソゲストレル含有製剤は、レボノルゲストレル含有製剤やレボノルゲストレル子宮内システムと比較して、乳がんリスクがやや高い可能性があります。
引用文献
Hadizadeh F, et al. JAMA Oncol. 2025;11(12):1497-1506. doi:10.1001/jamaoncol.2025.4480
論文内容
スウェーデンの全国登録データを用いた住民ベースのコホート研究です。2006年1月1日時点でスウェーデンに居住する13~49歳の思春期女性および女性で、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん、両側卵巣摘出術、または不妊治療の既往がない全員を対象とし、2019年まで追跡しました。OC/LEP使用歴と使用期間を、ホルモン製剤と投与経路別に分類しました。時間依存性Cox回帰を用いて、上皮内がんおよび浸潤性乳がんの発生に対するHRと95%CIを推定しました。
結果
2,095,130人の思春期女性および女性(診断時年齢の中央値45歳、IQR 41-48歳)が21,020,846人年追跡され、16,385例の乳がんが発生しました。OC/LEP使用歴がある群では乳がんリスクの増加が認められました(HR、1.24;95%CI、1.20-1.28)。これは使用者7,752人(95%CI、5,350-14,070)あたり1例の追加発症に相当し、配合剤(HR、1.12;95%CI、1.07-1.17)とプロゲスチン単独製剤(HR、1.21;95%CI、1.17-1.25)の両方で関連が認められました。デソゲストレル単独経口製剤(HR、1.18;95%CI、1.13-1.23)とデソゲストレル配合経口製剤(HR、1.19;95%CI、1.08-1.31)、およびデソゲストレルの活性代謝物であるエトノゲストレルを含有するインプラント(HR、1.22;95%CI、1.11-1.35)で、より高いリスクが認められました。これらは、レボノルゲストレル含有配合ピル(HR、1.09;95%CI、1.03-1.15)およびレボノルゲストレル52mg子宮内システム(HR、1.13;95%CI、1.09-1.18)と比較して高値でした。多くの使用者がいたにもかかわらず、メドロキシプロゲステロンアセテート注射製剤、エトノゲストレル腟リング、またはドロスピレノン配合経口製剤では、統計学的に有意なリスク増加は認められませんでした。
私見
プロゲスチンの種類により乳がんリスクに実質的な差異があることを示した点、デソゲストレル含有製剤がレボノルゲストレル含有製剤よりも高いリスクと関連していたことが記載されています。
プロゲスチン単独製剤で配合剤よりもリスクが高い傾向については、エストロゲンがプロゲスチンの有害作用を減弱させる可能性を示唆しているのでしょうか。ここは、今後追試を待ちたいと思います。
下記2点も重要な点だと思っています。
レボノルゲストレル子宮内システム(ミレーナ)でも乳がんリスク増加が認められましたが、これはスウェーデン、デンマーク、オーストラリアの最近の登録研究の知見と一致しています(Yi H, et al. Am J Obstet Gynecol, 2024; Mørch LS, et al. JAMA, 2024; Tuesley KM, et al. J Natl Cancer Inst, 2025)。ドロスピレノン配合製剤(ヤーズ、ヤーズフレックス、ドロエチ)は統計学的に有意なリスク増加を示さず(HR、1.04;95%CI、0.96-1.12)、相対的に低リスクプロファイルを示唆しました。これはデンマークの先行研究とも一致する結果です(Mørch LS, et al. N Engl J Med, 2017)。
一般的に、40歳代女性の10年間の乳がん発症リスクは約1.5~2%とされています。本研究では、OC/LEP使用により乳がん絶対リスクは小さく増加しますが、望まない妊娠の予防、日常QOL向上、卵巣がんおよび子宮体がんに対する保護作用といった確立された利益との総合的な検討が必要だと思っています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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