はじめに
反復流産患者の周産期予後はどうなのか、というのは大きな課題があります。胎盤の機能障害は初期流産、子宮内胎児発育不全、胎盤早期剥離、妊娠高血圧症候群、死産、早産などを引き起こします。遺伝子関連研究でも、血管新生や血管収縮に関連する血管内皮成長因子遺伝子多型が、反復流産と早産の両方に関連している可能性を示唆する報告も出てきています。今回、反復流産と早産との関係を示した報告をご紹介いたします。
ポイント
反復流産歴のある女性は早産リスクが有意に高く、流産回数が増えるほどリスクが上昇します。特に原因不明の反復流産患者では早産リスクが2倍以上となるため、妊娠継続時は周産期施設での管理が推奨されます。
引用文献
Clara Q Wu, et al. Fertil Steril. 2022. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2022.01.004
論文内容
反復流産患者の早産との関係を調べたシステマティックレビューおよびメタアナリシスです。PubMed、Embase、Google Scholar、Cochrane Trial Registryを用いて関連する研究を特定し、反復流産と早産との関連性に関するオッズ比を評価しました。効果推定値はDerSimonian and Lairdランダム効果メタアナリシスモデルを用いました。
結果
18件の研究の反復流産歴のある女性58,766名と反復流産歴のない女性2,949,222名を対象としました。37週未満の早産の発生率は、反復流産群では4.9%~19.6%、非反復流産群では1.5%~14.0%でした。
ランダム効果メタ解析の結果、pooled ORは1.60(95% CI, 1.45-1.78;18の観察研究;I2 = 85.6%)でした。早産のオッズは、流産回数が多いほど高くなる傾向が認められました。2回の反復流産(pooled OR, 1.31, 95% CI, 1.09-1.57, I2 = 88.9%)、3回以上の反復流産(pooled OR, 1.58, 95% CI, 1.27-1.96, I2 = 71.7%)、4回以上の反復流産(pooled OR, 1.81, 95% CI, 1.58-2.07, I2 = 73.6%)という結果でした。原因不明の反復流産患者の早産リスクは有意に高くなっていました(pooled OR, 2.05;95% CI, 1.46-2.89;I2 = 21.0%)。ただし、交絡因子の調整に一貫性がなく、研究間の有意な異質性が指摘されています。
反復流産歴のある女性は、その後の妊娠で早産になる確率が有意に高いことがわかりました。
私見
流産歴が2回、3回以上、4回以上の流産歴のある女性では、反復流産歴のない女性と比較して、早産リスクがそれぞれ1.3倍、1.6倍、1.8倍となることがわかりました。
研究の異質性、質の高い研究が少ないこと、反復流産の定義や原因の層別化がばらばらなことなどの問題もありますが、この結果をみると反復流産患者が妊娠継続した場合には大きめの病院での妊娠管理が好ましい印象を持ちます。
最近では原因別に低用量アスピリンやプロゲステロン補充の有効性を示す報告も出てきています。不妊施設と周産期施設に移る時期ですので、介入が遅れることがないよう取り組んでいきたいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。