体外受精

2023.11.29

卵巣予備能低下女性に対しての低刺激は有効?

はじめに

国内では体外受精不妊女性の利便性やHMG/FSH注射に伴うストレスや合併症軽減を目的として、長い歴史の中で低刺激法が行われてきました。低刺激法は適切に用いることで、患者様にとって快適な不妊治療を提供できる可能性を秘めています(Hum Reprod Update. 2009, doi: 10.1093/humupd/dmn056)。
卵巣予備能が低下している患者に対して卵巣刺激を行なっても、回収卵子数の大幅な増加は見込めません。そのため、どのような刺激法を選択するかは難しいテーマです。以下にいくつかの報告をご紹介します。

ポイント

低刺激はFSH投与量が減少するため、経済的・身体的負担が軽減され、適切に使用することで妊娠率は通常刺激と同等に確保できる可能性があります。

引用文献

Rong Yu, et al. J Int Med Res. 2018 Jun;46(6):2327-2337. doi: 10.1177/0300060518770346.

論文内容

ロング法、LTZ法、アンタゴニスト法を比較した報告

116名(42歳以下、AMH1.5ng/mL未満)が参加したRCTです。ロング法54周期、LTZ法52周期、アンタゴニスト法60周期の成績を比較検討したところ、LTZ法(32.69%)はロング法(11.11%)およびアンタゴニスト法(16.67%)と比較して周期中止率が有意に高くなりました。アンタゴニスト法では初期流産率(44.44%)がロング法(12.50%)より高くなりましたが、LTZ法(16.67%)との差はありませんでした。臨床妊娠率および出生率にはロング法、LTZ法、アンタゴニスト法で差はありませんでした。

引用文献

T N Bechtejew, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2017 Sep;50(3):315-323. doi: 10.1002/uog.17442.

論文内容

低刺激のメタアナリシス

22件の報告を検討し、出生率、臨床妊娠率、流産率、周期中止率の相対リスク(RR)、OHSSのPetoオッズ比、回収卵子数およびFSH消費量の平均差(MD)を評価しました。その中で卵巣反応不良と考えられる女性について比較を行なっています。本レビューでは累積妊娠率については言及されていません。

  1. CC卵巣刺激と標準卵巣刺激の比較
    出生率(RR 0.9、95%CI 0.6~1.2、中等度の質の証拠)や臨床妊娠率(RR 1.0、95%CI 0.8~1.4、中等度の質の証拠)に差は認めませんでしたが、FSH投与量は大幅に減少しました。
  2. LTZ卵巣刺激と標準卵巣刺激の比較
    回収卵子数に差は認めませんでした(MD -0.4、95%CI -0.9~0.1)が、FSH投与量は大幅に減少しました。

1、2ともに他の評価項目はエビデンスが低く、比較することは困難でした。
また、他のレビューとして、LTZ卵巣刺激と標準卵巣刺激の比較(Song Y, et al. Gynecol Endocrinol 2014)では臨床妊娠率を低下させる可能性が示唆され、CC卵巣刺激と標準卵巣刺激の比較(Song D, et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol 2016)では臨床妊娠率は同等と報告されています。

引用文献

Keiji Kuroda, et al. J Obstet Gynaecol Res. 2022 Mar;48(3):521-532. doi: 10.1111/jog.15150.

論文内容

国内のレビュー

※低刺激のメリット

  • OHSSを含む合併症リスクが少ない
  • ゴナドトロピン注射の必要性と費用が減少する
  • ART治療を継続しやすい
  • 新鮮胚移植後の妊娠確率が高い可能性
  • ラボの負担軽減
  • 未使用胚数の減少

※低刺激のデメリット

  • 回収卵子数および凍結保存胚数の減少
  • 累積出生率の低下
  • 反復周期の必要性増加

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 低刺激排卵誘発法

# 卵巣刺激

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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