体外受精

2021.05.14

高齢女性における二個胚移植の臨床結果(当院関連報告)

はじめに

複数胚移植は多胎のリスクが高いことが知られています。複数胚移植による多胎妊娠の頻度を低下させるため、日本では2008年に複数胚移植の条件について日本産科婦人科学会の会告が発布されています。ただし、40歳を超える女性の二個胚移植でも、双子のリスクは高いのでしょうか。実は引用する論文はほぼありません。 
私たちは症例ベースの経験として、45歳後半女性の反復不成功の方で初期胚2個を移植して二卵性双胎の出産に至った経験があります。だからこそ、妊娠率を少しでも上げるために、早い段階で二個胚移植という判断はしないようにしています。 
高齢女性の二個胚移植の成績はどうでしょうか。光井潤一郎先生がまとめてくれた当院からの報告をご紹介させていただきます。 

ポイント

40歳以上の女性でも胚盤胞のグレードがfair-fair以上であれば、二個胚移植で双胎妊娠・分娩に至ることは稀とは言えません。二個胚移植にあたっては胚盤胞グレード分類を含めて双胎妊娠の頻度を十分に説明する必要があります。 

引用文献

「高齢女性における二個胚移植の臨床転帰の検討」 
光井潤一郎ら. 日本受精着床学会雑誌 38 (1) 65-69, 2021. 

論文内容

亀田総合病院・亀田IVFクリニック幕張の2施設で二個胚移植を行った女性(平均採卵時年齢は40.4±3.3歳(27-47歳)、平均移植時年齢は41.0±3.3歳(27-49歳)、平均不妊期間は2.4±2.8年(0-16年)、当院での平均採卵回数4.1±2.9回(0-21回)、当院での平均胚移植回数は4.8±3.4回(1-19回))の295症例を対象に妊娠、双胎数を検討しました。 

結果

移植時の年齢層としては34歳以下が13例、35-39歳が61例、40歳以上は221例でした。胎嚢が1つ確認された症例が66症例で、そのうち分娩に至った例が41症例、流産に至った例が22症例、妊娠継続中が3症例でした。胎嚢が2つ確認された例は18症例で、そのうち双胎として分娩に至った例が9症例、胎嚢いずれもが流産に至った例が3症例、vanishing twinとなった例が6症例でした。 
40歳以上の症例に二個胚移植を行うと、双胎妊娠から分娩まで至る例が、40歳未満の症例に比べて減少するとは必ずしも言えないことがわかりました。移植した胚盤胞のグレードを培養日数とGardner分類で分類したところ、40歳以上でも2個の胚盤胞のグレードが良好である場合、双胎分娩に至る傾向がありました。 
胚盤胞グレードで分類したところ、グレードが低い組み合わせであるほど双胎妊娠・分娩が成立しにくい傾向が見られました。40歳以上では2個の胚盤胞グレードがgood-goodである場合、20.0%が分娩に至りました。また、40歳以上で分娩に至った31例のうち、19.4%にあたる6例が双胎妊娠となりました。胚盤胞グレードがfair-fair以上であれば、40歳以上でも双胎妊娠・分娩に至ることは稀とは言えないことがわかりました。 
40歳以上の二個胚移植にあたっても、胚盤胞グレード分類を含めて双胎妊娠の頻度を説明する必要があると考えられます。 

私見

実際、外来をしていると、「前の病院では2個戻してもらっていたんです。」「双子ちゃんなら、それはそれで嬉しいです。」という声を聞くことが多いです。 
多胎は周産期予後にも影響を与えますし、低出生体重で生まれてくると胎児に障害が残る可能性もあります。今後、着床前検査が進むと複数胚移植はだいぶん減るとは思いますが、しっかり症例を見極め、治療方針を決めていきたいと思います。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多胎

# 胚移植(ET)

# 年齢素因

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

IVF-FETにおけるvanishing twin・減胎の周産期予後(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.06.09

vanishing twinが凍結融解胚移植における単胎出生転帰に及ぼす影響(Fertil Steril. 2025)

2025.10.08

単一胚移植後の一卵性双胎発生率とリスク因子(Hum Reprod. 2025)

2025.09.24

日本の生殖補助医療における多胚移植率と多胎率の推移(J Obstet Gynaecol Res. 2025)

2025.05.13

一卵性多胎(体外受精)のリスク因子(論文紹介)

2023.02.08

体外受精の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)

2024.11.07

卵巣刺激に用いるHMG製剤とは

2021.02.24

今月の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

2021.09.11

睡眠と精液検査② (論文紹介)

2022.08.13

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03