体外受精

2023.09.08

アシステッドハッチング着床不全に有効?(Hum Reprod. 2023)

はじめに

孵化補助(アシステッドハッチング)は、出生率への有効性はランダム化比較試験やメタアナリシスでも有効性は示されていません。では、反復着床不全患者でも有効性がないのでしょうか。ランダム化比較試験をご紹介いたします。 

ポイント

反復着床不全カップルでのアシステッドハッチングの有効性は認められませんでした。 

引用文献

Max H J M Curfs, et al. Hum Reprod. 2023 Aug 29;dead173. doi: 10.1093/humrep/dead173. 

論文内容

着床不全患者のアシステッドハッチングの有効性を検討するために設計された二重盲検多施設ランダム化比較試験です。アシステッドハッチング後の出生率が10%増加することを証明するために各治療群に294組の参加者(合計588組の不妊症カップル)が必要でした。2012年11月から2017年11月に組み入れられ無作為化され、297名がアシステッドハッチング群に、295名がコントロール群に割り付けられました。 
20名ずつのブロック無作為化が適用され、無作為化は参加者、治療担当医師、胚移植手順に関与する検査スタッフには秘密にされました。卵巣刺激、採卵方法、胚培養、移植方法、移植胚選択などはアシステッドハッチング群・コントロール群で同じとしました。 
参加者は、少なくとも2回の連続した新鮮胚移植もしくは凍結融解胚移植を受け、妊娠に至らなかった患者を対象としました。オランダの5つの生殖医療施設で行われました。 

結果

新鮮胚とその後の凍結・融解胚の移植(該当する場合)を含む、開始周期あたりの累積出生率は、アシステッドハッチング群(n=297、25.9%)で77名、コントロール群(n=295、23.1%)で68名であり、有意差を認めませんでした(RR:1.125、95%CI:0.847~1.494、P = 0.416)。 

私見

海外やコクランレビューでも肯定的な意見がありません。ただ、アシステッドハッチングのする時期、大きさなど統一化をはかることが難しく、マイナスにならないのであれば慣習的に行われているのが実際のところです。 

イギリス(HFEA)はアシステッドハッチングの有効性が証明されていないため、追加費用なしで行うべきとしています。 

米国生殖医学会(ASRM 2022)は、有効性に関するエビデンスが不十分であるため、アシステッドハッチングを推奨すべきではないとしています。 

2021年のコクランレビューでも、利用可能なエビデンスの質はvery low-lowでバイアスリスクが高いと判断されています。アシステッドハッチングの有無で臨床妊娠率にほとんど差がない可能性が示されています(OR 1.07、95%CI 0.92~1.25;14のRCT、N = 2848;I² = 45%)。多胎のリスク上昇につながる可能性が示唆されていて、慎重に行うべきとしています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当ブログ内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 透明帯孵化補助(AHA)

# 反復着床不全(RIF)

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

子宮内膜ポリープ合併慢性子宮内膜炎に対するレゼクトスコープと組織除去デバイスの治療効果比較(J Reprod Immunol. 2026)

2026.07.15

反復着床不全女性に対する外来子宮鏡検査の有効性_TROPHY試験(Lancet. 2016)

2026.07.14

内膜不均一エコー所見における慢性子宮内膜炎有病率(Am J Reprod Immunol. 2023)

2026.07.10

反復着床不全女性における子宮内膜液および腟分泌液の細菌叢(Mediat Inflamm. 2019)

2026.06.30

抗β2GPI/HLA-DR抗体と子宮内膜マイクロバイオーム(Reprod Med Biol. 2026)

2026.06.29

体外受精の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

40歳以上のART累積出生率(Sci Rep. 2024)

2024.11.07

卵巣刺激に用いるHMG製剤とは

2021.02.24

今月の人気記事

自然周期での小卵胞採卵は生殖医療成績を改善する(Fertil Steril. 2016) 

2023.10.16

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2021.09.11

日本の妊娠可能男性の精液基準値は?(BMJ Open. 2013)

2021.09.11

睡眠と精液検査② (論文紹介)

2022.08.13

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03