体外受精

2025.08.29

反復着床不全に対する子宮内注入療法比較

はじめに

反復着床不全(RIF)に対する子宮内局所療法はESHRE RIF good practice recommendation 2023では全てnot recommendになっています。理由としては、エビデンスの質が低い、標準化の欠如、安全性データの不足、経験的治療の観点、が挙げられます。しかし、一定数患者には子宮内局所療法は有効であるという考えは根強くあり、私のその一人です。反復着床不全に対する子宮内注入治療比較した報告をご紹介いたします。

ポイント

PRPとPBMCsの子宮内注入がRIF女性の妊娠転帰を改善し、PRPが最も効果的な治療法として確認されました。

引用文献

Lingjie Jiang, et al.  J Assist Reprod Genet. 2025 Apr;42(4):1177-1190. doi: 10.1007/s10815-025-03436-2.

論文内容

G-CSF、PRP、HCG、PBMCsを含む様々な子宮内注入治療の効果を比較し、反復着床不全(RIF)女性の臨床的妊娠率、出生率、流産率改善を評価することを目的としました。 

コクラン中央登録対照試験(CENTRAL)、PubMed、Embase、Web of Science、中国知識インターネット(CNKI)などの複数のデータベースで包括的な検索を実施し、RIFに対する子宮内注入治療の有効性を評価するランダム化比較試験(RCT)を特定しました。データ抽出と質評価は2名の査読者が独立して実施しました。ランダム効果モデルを用いてネットワークメタ解析を実施し、異なる治療法の転帰を比較しました。

結果

25RCT3035名の患者が含まれたネットワークメタ解析を実施しました。治療にはG-CSF、PRP、HCG、PBMCs、プラセボ、および空白対照が含まれました。臨床的妊娠率と出生率のネットワークメタ解析結果は治療間で統計学的に有意でしたが、Mでは統計学的有意性は認められませんでした。SUCRAランキングでは、G-CSF、PRP、HCG、PBMCsの子宮内注入治療がプラセボや空白対照よりもはるかに優れていることが示されました。 

臨床的妊娠のSUCRA値は以下の通りでした 

PRP(84.5%)>PBMCs(76.5%)>G-CSF(65.7%)>HCG(52.5%)>プラセボ(20.8%)>空白(0.1%)。 

出生率のSUCRA値は以下の通りでした 

PRP(81.4%)>PBMCs(64.6%)>G-CSF(58.0%)>HCG(48.7%)>プラセボ(42.4%)>空白(4.9%)。

私見

ESHRE RIF good practice recommendation 2023では、RIFに対する事前治療としてライフスタイルの改善、ビタミン補給、抗酸化療法、子宮内膜炎管理、免疫調節に焦点を当てており、現時点では子宮内注入は推奨されていません。さらなる研究を行なっていく必要がありそうです。 
ESHRE RIF good practice recommendation 2023での子宮内注入評価は下記のとおりです。

1. G-CSF子宮内投与
複数のメタ解析で矛盾する結果。臨床妊娠率への影響は報告されているが、出生率への明確な改善効果が示されていない。
副作用として粘膜炎、脾腫、肝腫大、一過性低血圧などがあげられる。 

2. 子宮内PRP注入
根拠: 一部のRCTで臨床妊娠率の改善が報告されているが、証拠が不十分。PRP調製法の標準化もされていない。
副作用データが不十分。 

3. 子宮内hCG注入
観察研究では出生率や臨床妊娠率の改善が示唆されているが、主に小規模で非対照研究に基づいている。
hCG投与量、投与タイミング、注入液量に関して研究間で大きな異質性がある。 

4. PBMC注入
メタアナリシスでは出生率と妊娠率の改善が示されているが、研究の質が低く、PBMC調製法に大きな違いがある 

5. 子宮内膜スクラッチ
3つのRCTに基づくメタアナリシスで、妊娠率や出生率の有意な改善は認められなかった

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# G-CSF

# hCG注入療法

# 反復着床不全(RIF)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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