
はじめに
子宮内膜ポリープ(EP)を有する女性では慢性子宮内膜炎(CE)の有病率が有意に高く、両疾患の関連性が指摘されています。CEは従来、子宮内感染が主因とされドキシサイクリン等の広域抗菌薬投与がゴールドスタンダードとされてきましたが、EP合併CEの多くは非感染性であり、抗菌薬を用いない子宮鏡下手術により治癒可能であることが報告されてきました。今回、レゼクトスコープと組織除去デバイスを用いた子宮鏡下ポリープ切除術のCE治療効果を比較した報告をご紹介いたします。
ポイント
子宮内膜ポリープ合併慢性子宮内膜炎に対する子宮鏡下ポリープ切除術の治癒率は、レゼクトスコープと組織除去デバイスのいずれを用いても同等で良好です。
引用文献
Kuroda K, et al. J Reprod Immunol. 2026;175:104878. doi: 10.1016/j.jri.2026.104878.
論文内容
EPを有する不妊女性を対象に、従来型レゼクトスコープと組織除去デバイスを用いた子宮鏡下ポリープ切除術におけるCE治癒率を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
対象は2021年1月から2025年4月にかけて杉山産婦人科丸の内で子宮鏡下ポリープ切除術を受けたEPを有する不妊女性239例です。2021年1月から2022年6月の129例はレゼクトスコープ(RS群)を用い、術中の子宮鏡視覚所見(限局性またはびまん性発赤、間質浮腫、マイクロポリープ、ストロベリー所見などのCicinelliらの標準化視覚的基準)に基づいてCE所見を呈する内膜を同定し、EPとともに切除しました。2022年7月から2025年4月の110例は組織除去デバイス(MyoSure® Manual、TRD群)を用いてEP単独の切除を行いました。
検査時期と手法に両群間で重要な非対称性があります。術前検査として、RS群では子宮内膜吸引検体に細菌培養のみを実施したのに対し、TRD群では同検体にCD138免疫染色と細菌培養の両方を実施しています。RS群では術前のCD138によるCE評価は行われておらず、術後の手術検体(ポリープ+切除内膜)に対するCD138免疫染色(10高倍率視野あたり≧5陽性形質細胞でCE陽性)が初のCE病理学的判定となります。TRD群では術前内膜検体および術中ポリープ検体の両方でCD138染色が実施されています。術後の治癒判定は両群とも、抗菌薬を投与しない次周期黄体期(基礎体温または尿中LHで確認)に内膜吸引生検を施行し、CD138免疫染色および細菌培養を再実施しています。
子宮内細菌培養は東京のBML, Inc.が処理しました。検体採取前に腟内を生理食塩水で十分に洗浄してコンタミネーションを防止し、子宮内膜吸引キュレット(Pipet Curet、Fuji Medical Corporation)で採取しています。培養結果が「Lactobacillus」「その他菌」「検出なし」の3カテゴリーで分類されています。主要評価項目は子宮鏡下手術後のCE治癒率、副次評価項目はCE診断率および術後妊娠率です。
結果
10高倍率視野あたりのCD138陽性細胞数中央値(IQR)はRS群で12(5–29)、TRD群で15(7.5–25)であり(p=0.35)、CE有病率はそれぞれ80.6%(104/129例)、84.5%(93/110例)と両群間に有意差は認めませんでした(p=0.50)。子宮内細菌培養ではほとんどの症例で細菌が検出されず、RS群でLactobacillus 8.5%、その他菌7.0%、検出なし84.5%、TRD群でLactobacillus 10%、その他菌13.6%、検出なし76.4%と、両群間で有意差は認めませんでした。
子宮鏡下ポリープ切除術はCD138陽性細胞数を、RS群で17(9–34.5)から1(0–2)へ、TRD群で16(11–27)から1(0–3)へ有意に減少させました(いずれもp<0.0001)。log10変換したCD138数の中央値変化はRS群で−0.98、TRD群で−0.93でした。CD138陽性細胞数の減少率はRS群97.8%(89/91例)、TRD群95.1%(77/81例)(p=0.42)、CE治癒率はそれぞれ87.9%(80/91例)、84.0%(68/81例)と両群間に有意差を認めませんでした(p=0.51)。
TRD群でCE陽性であった81例について、術前内膜生検と術中ポリープ検体のCD138陽性細胞分布を解析したところ、ポリープ単独陽性17例(21.0%)、内膜単独陽性1例(1.2%)、ポリープ・内膜両者陽性63例(77.8%)であり、大多数で両者にCD138陽性細胞が存在していました。さらに吸引内膜にポリープ組織が混入していなかった72例について比較した結果、ポリープ単独CE群(17例)と両者CE群(55例)の術後CD138陽性細胞数中央値はそれぞれ0(0–3)、1(0–3)(p=0.33)、CE治癒率は80.0%(12例)、81.6%(40例)(p=1.00)と差を認めませんでした。内膜単独CE陽性の1例もCEは治癒しました。
42歳以下で治療再開した117例(RS群72例、TRD群45例)における術後6カ月以内の妊娠予後では、不妊治療内訳(タイミング・人工授精・体外受精)に有意差はなく(p=0.70)、出生率/継続妊娠率はRS群58.3%、TRD群57.8%(p=1.00)、臨床妊娠率77.8% vs 75.6%(p=0.82)、流産率25.0% vs 23.5%(p=1.00)と両群間に有意差を認めませんでした。
私見
先行研究では、Vitagliano A, et al. Diagnostics. 2021において子宮内膜ポリープ合併慢性子宮内膜炎の有病率が70.7%(95%CI、55.7–83.7%)と報告されています。
特に注目すべきは、TRD群においてCD138陽性細胞がポリープ単独より「ポリープ+内膜」両者に存在する症例が77.8%と大多数を占めていたにもかかわらず、ポリープ切除単独で内膜のCD138陽性細胞が減少しCEが治癒した点です。これはEP合併CEの本態が、病原微生物による感染ではなく、EP自体が惹起する慢性子宮内炎症である可能性を支持する所見です。先行研究でもEP内には肥満細胞浸潤の増加(El-Hamarneh T, et al. Fertil Steril. 2013)、IFN-γやTNF-αなどの炎症性メディエーターの増加(Ben-Nagi J, et al. Reprod Biomed Online. 2009、Mollo A, et al. Fertil Steril. 2011)が報告されており、ポリープ切除によりこれら炎症性メディエーターの放出が低下することがCE改善につながると推察されています。
細菌培養については「検出なし」が80%前後と高値である理由が、真の無菌状態を反映するのか、それとも従来型培養法の感度限界を反映するのかは本論文からは判断できません。
慢性子宮内膜炎治療を軸に考える場合は先に子宮鏡、何もないことを踏まえた上、もしくは内膜ポリープ切除したうえで細菌叢検査が無難であると判断しています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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