
はじめに
CEは診断が困難であるため有病率は過小評価されている可能性が高く、特に経腟超音波で不均一な子宮内膜エコー輝度を呈する患者ではCE合併が懸念されますが、不妊女性における正確な有病率や代謝異常との関連は明らかではありませんでした。今回、不均一な子宮内膜エコー輝度を有するIVF女性を対象としたレトロスペクティブコホート研究をご紹介いたします。
ポイント
不均一な子宮内膜エコー輝度を有するIVF女性ではCE有病率が高く、ホモシステイン値・BMI上昇と関連し、抗菌薬治療後も出生率が有意に低下しました。
引用文献
Guo J, et al. Am J Reprod Immunol. 2023 Oct;90(4):e13771. doi: 10.1111/aji.13771.
論文内容
不均一な子宮内膜エコー輝度を呈する女性における慢性子宮内膜炎(CE)の有病率を評価し、CEと代謝学的特性および後続の凍結融解胚移植(FET)周期における妊娠予後との関連を検討することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
大学病院および学術医療センターにおいて、2017年6月から2020年4月の期間に全胚凍結後の初回FET周期前に子宮鏡検査と子宮内膜生検を施行した不妊女性315例を対象としました。IVF治療中の超音波観察において「子宮内膜形態不良(poor endometrial morphology)」を理由に全胚凍結戦略(Freeze-all strategy)が施行された患者として登録されています。
患者をCE群(病理組織学的CEまたは子宮鏡的CE)と非CE群に分類しました。卵巣刺激にはGnRHアンタゴニストプロトコルを用い、全症例で全胚凍結戦略を採用しました。子宮鏡検査は増殖期に外径5mmの子宮鏡を用いて施行し、病理組織学的CEは「10HPFあたりCD138陽性またはCD38陽性子宮内膜間質形質細胞(ESPC)≥1個」と定義しました。子宮鏡的CEはCicinelliらの基準(充血のストロベリー様所見、マイクロポリープ、点状出血、間質浮腫)に従って診断しました。CE診断症例にはモキシフロキサシン(400mg/日)とメトロニダゾール(500mg×2/日)を14日間投与しました。
結果
病理組織学的CEおよび子宮鏡的CEの有病率はそれぞれ78.1%および34.9%でした。子宮鏡所見の内訳は、正常子宮腔50.2%、子宮内膜ポリープ12.7%、子宮内膜ポリープ様過形成15.2%、軽度子宮内癒着2.9%、子宮腔形態異常4.1%、子宮鏡的CE 34.9%でした。病理組織学的所見を基準とした場合、子宮鏡検査の感度は36.2%、特異度は69.6%、偽陽性率63.8%、偽陰性率30.4%でした。
CEはインスリン応答および脂質異常症とは独立して、ホモシステイン値およびBMIの上昇と関連していました。病理組織学的CE群では非CE群と比較してホモシステイン値が有意に高く(10.18 ± 3.68 vs. 9.1 ± 1.87 µmol/L、P=.021)、子宮鏡的CE群では非CE群と比較してBMI(24.07 ± 3.58 vs. 22.73 ± 3.34 kg/m²、P=.003)、空腹時インスリン(11.26 ± 7.42 vs. 9.18 ± 6.91 µIU/mL、P=.016)、HOMA-IR(2.61 ± 1.85 vs. 2.14 ± 1.71、P=.048)が有意に高値でした。単変量ロジスティック回帰分析では、ホモシステイン高値が病理組織学的CEのリスク因子(OR、1.182;95%CI、1.01–1.384;P=.037)であり、BMI高値が子宮鏡的CEのリスク因子(OR、1.117;95%CI、1.041–1.199;P=.002)でした。
妊娠予後については、病理組織学的CE群で出生率が有意に低下し(38.62% vs. 52.17%、P=.043)、年齢・AFC・不妊期間・子宮内膜厚・BMI・移植胚数・移植胚種で調整後も独立したリスク因子でした(OR、2.167;95%CI、1.037–4.525;P=.04)。子宮鏡的CE群では出生率(33.64% vs. 45.85%、P=.036)および累積出生率(49.09% vs. 61.95%、P=.028)の両方が有意に低く、調整後も出生率(OR、4.239;95%CI、1.929–9.313;P=.001)および累積出生率(OR、3.963;95%CI、1.875–8.376;P=.001)の独立したリスク因子でした。
結論として、不均一な子宮内膜エコー輝度を有する不妊女性ではCEの有病率が高く、抗菌薬治療後も出生率を有意に低下させ、子宮鏡検査によるCE診断はIVF患者における累積妊娠確率を評価する上で重要です。
私見
不均一な子宮内膜エコー輝度を呈するIVF女性におけるCE有病率を初めて系統的に検討した報告です。病理組織学的CE 78.1%という有病率は、不妊一般集団(最大56.8%)、反復着床不全患者(最大67.5%)、反復流産患者(最大67.6%)と比較しても極めて高く(Espinos JJ, et al. Reprod Biomed Online. 2021; Cicinelli E, et al. Fertil Steril. 2022)、本所見が当該集団に対するスクリーニング推奨の根拠となりうる重要な知見です。
子宮鏡検査の感度36.2%、特異度69.6%は決して高くなく、子宮鏡所見と病理組織所見の不一致は本邦の臨床現場でも長らく課題となっています(Yasuo T, Kitaya K. Diagnostics. 2022)。それにもかかわらず、本研究で子宮鏡的CEのみが累積出生率の独立リスク因子であった点は興味深く、子宮鏡所見が捉えるのは「重度のCE」であり、それが妊娠予後により強く影響している可能性を示唆しています。
論文中では「不均一な子宮内膜エコー輝度(non-uniform endometrial echogenicity)」を、「特徴的なtriple-line pattern(三層構造)を欠く子宮内膜形態」が判定基準となっています。ただし、複数の観察者による判定の一致度、判定時期の卵胞径やE2値の規定、定量的なエコー輝度評価などについては詳細な記載がなく、観察者間バイアスのリスクは否定できません。でも、これは子宮鏡のマイナー病変でも同じことなので超音波所見にrevisitしてみようかと考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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