はじめに
絨毛組織からのエストラジオール・プロゲステロンのホルモン産生は妊娠5-6週から少しずつはじまり、妊娠7週ごろより著明に増え始め、妊娠8-10週で十分量に達します。では、妊娠継続群と流産群でホルモン分泌は差があるのでしょうか。こちらを調査した国内からの報告をご紹介いたします。
ポイント
絨毛組織からのエストラジオールおよびプロゲステロン分泌は妊娠継続群と流産群で異なるパターンを示し、特に妊娠6週2日以降のプロゲステロン値が流産予測の指標となりうることが明らかになりました。
引用文献
Satoshi Kawachiya, et al. Reprod Med Biol. 2018 Nov 1;18(1):91-96. doi: 10.1002/rmb2.12254.
論文内容
2009年6月から2017年4月にホルモン調整周期で妊娠に至った女性120名(出生:76名、初期流産:44名;一卵性双胎除く)を対象としたレトロスペクティブ・コホート研究です。自然周期または軽度卵巣刺激治療で胚盤胞凍結を実施し、選択的にガラス化胚盤胞を作成しています。
ホルモン調整周期は経口エストロゲン錠4-6 mg/d(ジュリナ)を月経2-3日目から開始しました。月経10日目に経腟超音波検査で子宮内膜厚7mm以上に達していれば、11日目(1w5d相当)からジドロゲステロン錠30 mg/d(デュファストン)、14日目(2w1d相当)からエチニルエストラジオール0.05 mg+ノルゲストレル0.5 mg(プラノバール)も追加しました。月経18日目(2w5d相当)に単一胚盤胞移植を実施しています。血清エストラジオール値およびプロゲステロン値は5日ごと(胚移植翌日から9w1dまで)に集中的にモニターしています。
結果
絨毛組織からのホルモン産生は妊娠5-6週という早い時期から始まっており、妊娠転帰(出生群と流産群)によって差を認めました。血清プロゲステロン値は妊娠6w2d以降に指数関数的に上昇し、妊娠継続かどうかを区別することができました。出生群と流産群で、6w2d以降に出生群の下位四分位と流産群の上位四分位は交差しませんでした。
私見
絨毛組織からのエストラジオールおよびプロゲステロン分泌は妊娠継続群と流産群で異なるパターンを示しました。そして、妊娠6週2日以降から流産群の予測因子になりそうです。妊娠7週になるとGS/CRLの大きさや胎児心拍などから画像でも流産予測がつくことがありますので、6週台にある程度方向性を予見できるのは新しい発見だと思います。この報告ではhCGとプロゲステロンの妊娠初期予測の関連性や優位性は示していません。また、黄体機能不全がベースにある流産がどの程度あるのか不明なのも興味があるところです。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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