今回は新しい試みとして動画で一つの技術の一連の流れを動画で紹介しています。
今回紹介したい技術は卵子の中に精子を一つ入れて受精を促す顕微授精です。
顕微授精の一連の流れは以下の通りです。
①卵子を探して培養液で洗浄
②卵子の回りを取り囲んでいる卵丘細胞を取り外して成熟判定
③精子の探索と不動化
④卵子の紡錘糸観察
⑤卵子への精子注入
⑥受精確認
今回は、
⑥受精確認
になります。
卵子の中に精子を注入してから、約17時間後に卵子の反応を調べます。卵子の反応は以下の通りになります。
①変性(生命活動停止)
②2PN(正常受精)
③0PN(受精反応なし、あるいは、受精反応しかけ)
④1PN(異常受精)
⑤3PN(異常受精)
一つずつ解説をしています。
今回は、
④ 1PN(異常受精)
になります。
1PNは卵子の中にDNAの袋が1個しか見えない状態です。
正常受精であれば、男性のDNAの袋1個と女性のDNAの袋1個、合計2個見えるはずです。1個しか見えないのは、男性と女性のDNAが融合して一つになってしまっている場合、男性のみ、あるいは、女性のみのDNAの袋が見える場合のいずれかになります。融合してしまっている場合と片方だけのDNAの袋しか見えない場合とでは袋の大きさで、ある程度、区別ができます。袋の直径が大きい場合、融合している可能性があります。逆に直径が小さい場合、片側どちらか1個しかない可能性があります。今回紹介している動画は通常の袋よりも直径が大きいので融合している可能性が高いです。いずれにせよ、異常受精なので、治療には積極的には用いません。しかしながら、これまでに1PNの受精胚から元気な赤ちゃんが生まれている報告はありますので、治療に用いるか否かは受精状況と治療背景などを踏まえて患者様と相談致します。昨年の1PN率は4.2%(170/4066)でした。
次回は
⑤ 3PN(異常受精)
について説明致します。
文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士)
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