一般不妊

2022.01.31

レトロゾールとクロミフェンを連続して一般不妊治療で使うならどっち?( Hum Reprod. 2022.)

はじめに

過去の無作為化試験では、PCOS女性において、レトロゾールはクロミフェンと比較して、妊娠率と出産率が高いことが報告されていますが、原因不明不妊症患者では差がありませんでした。医療請求データからレトロゾールとクロミフェンの排卵誘発剤を連続して6サイクルまで投与した女性の妊娠成績を比較した報告をご紹介いたします。

ポイント

PCOS女性では、レトロゾールがクロミフェンより妊娠率・出生率が高い一方、多胎妊娠や周産期合併症のリスクも上昇しました。原因不明不妊症では両者に明確な差は認められませんでした。 

引用文献

Jennifer J Yland, et al. Hum Reprod. 2022. DOI: 10.1093/humrep/deac005 

論文内容

排卵誘発のためのレトロゾールとクエン酸クロミフェンの比較効果を検討する仮想的な試験を行うため、米国の大規模な医療費請求データベース(2011〜2015年)を使用しました。2011〜2014年にレトロゾールを開始した女性18,120名とクロミフェンを開始した女性49,647名のデータを分析しました。年齢は18〜45歳で、糖尿病、甲状腺疾患、肝障害、乳がんの既往はなく、試験開始前3カ月間は不妊治療を受けていない女性としました。クエン酸クロミフェンまたはレトロゾールを6サイクル連続で投与した群に対して妊娠、出産、多胎妊娠、早産、NICU入室、先天性奇形を評価項目としました。 

結果

妊娠、出産、新生児のアウトカムの推定確率は、全体的にも原因不明不妊患者においても同程度でした。PCOS女性では、intention-to-treat解析において、累積妊娠率はレトロゾール43%、クロミフェン37%(リスク差[RD]= 6.0%、95%CI:4.4、7.7)、累積生児出生率はレトロゾール32%、クロミフェン29%(RD = 3.1%、95%CI:1.5、4.8)でした。per protocol 解析では、多胎妊娠 19% vs. 9%、早産 20% vs. 15%、SGA 5% vs. 3%、NICU入室 22% vs. 16%、先天性奇形 8% vs. 2%でした(レトロゾール vs. クロミフェン) 
PCOS女性では、妊娠、出産、多胎妊娠、早産、NICU入室、先天性奇形のリスクは、クロミフェンと比較してレトロゾールの方が高くなりましたが、原因不明の不妊症の被験者には治療法の違いによる差が認められませんでした。 

私見

PCOS女性に対するレトロゾールの有用性は間違いなさそうですね。 
過去の主な無作為化試験は3つあります。 
クロミフェン治療に抵抗性の女性36名をレトロゾール群とプラセボ群にわけてプラセボ群は妊娠例がいなかったけれど、レトロゾール群では33.3%排卵するという報告(Kamath MS, et al. Fertil Steril 2010)からはじまり、PCOS女性159名を最大6回の排卵周期までレトロゾールまたはクロミフェンに無作為に割り付け、出生率はレトロゾール群で49%、クロミフェン群で35%であった報告(Amer SA, et al. Hum Reprod. 2017)、750名のPCOS女性をクロミフェンまたはレトロゾールのいずれかを最大5サイクル投与するように無作為に割り付け、妊娠率はレトロゾール群で31%、クロミフェン群で22%、生児誕生の確率はそれぞれ28%、19%という報告(PPCOS II trial: Legro RS, et al. N Engl J Med 2014)です。 
唯一、今回の報告で今までの報告と異なったのはレトロゾール群でクロミフェン群より多胎発生率が18.6% vs. 9.1%と高く、その結果として周産期合併症が増えた点です。多胎率が18.6%は出生した女性あたりで考えても体外受精の複数受精胚移植でも中々起きませんので、データ解析上のエラーではないでしょうか。臨床を行っていると、レトロゾールで複数排卵する方がいるものの、そこまで多くないため、そこにだけは作用機序などから考えても違和感があります。PPCOS II trialでもレトロゾール群とクロミフェン群の多胎発生率は3.9% vs. 6.9%とクロミフェン群の方が高くなっています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多胎

# クロミフェン、AIなど

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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