はじめに
中等度以上のOHSS予防(ASRM guideline2023)
をコラムで紹介しました。
GnRH antagonist製剤の黄体期投与はluteolysis(黄体退行)を促進し、卵巣からのVEGF分泌を抑制し、OHSS関連因子改善に働くとされています。
結果、国内保険診療上の取り扱いとして、「卵巣過剰刺激症候群の発症リスクが高い症例」に対して、認められたGnRH antagonist製剤を採卵日当日から5日間の使用が認められています。しかし、ASRM Practice Committeeでは「中等度以上のOHSSリスクを低下させるために、黄体期のGnRH antagonist単独投与は推奨されない(エビデンスの強さ:C;推奨度:弱)。」とされています。
エビデンスとなった報告をご紹介いたします。
ポイント
GnRH antagonist製剤の黄体期単独投与は、OHSS予防効果について一定の見解が得られておらず、ASRM Practice Committeeでは推奨されていません。予防投与ではカベルゴリンのエビデンスが高いとされています。
論文内容
1. GnRH antagonist単独投与に前向き
OHSSハイリスク105名(回収卵 ≥ 15, 血清E2値 ≥ 5000 pg/mL)を調査した前向きコホート研究。GnRH antagonist(OPU後3日-5日)投与群(18.03%)では、対照群(37.14%)と比較して、中等度/重度OHSS発生率が低いことが示された(P=.025)。対照群で認めた血清E2上昇、血清WBC上昇、血清VEGF上昇、腹水上昇、血清EFR-1上昇がGnRH antagonist投与群では認められず、 Ht低下率が大きかった。
C. Zeng, et al. Arch Gynecol Obstet, 300 (2019), pp. 223-233
2. GnRH antagonist単独投与に中立
OHSSハイリスク48名(回収卵≧20個, 卵胞径16mm以上 ≧ 18個, 血清E2値 ≧ 3500pg/mL, 卵巣径≧ 10cm)を評価したランダム化比較試.。採卵後から3日間GnRH antagonist投与した。GnRH antagonist投与群は血清E2値、疼痛スコア、胃腸症状、腹水の重症度が減少した。
K.M. Salama, et al. BMC Womens Health, 17 (2017), p. 108
3. GnRH antagonist単独投与に否定的
初回体外受精実施女性4735名中、OHSSハイリスク281名(回収卵≧20個, 卵胞径14mm以上 ≧ 18個、血清E2値 ≧ 8000pg/mL、卵巣径≧ 10cm、採卵時OHSS症状の訴えあり)を対照群(120名)と治療群(161名: AI 5mg/day 5日間 n=43、ミフェプリストン 50mg/day 3日間 n=51、GnRH antagonist 5日間 n=39、3剤併用n=28)に分けたプロスペクティブコホート研究。対照群と比較して、治療群の各サブグループにおける重症OHSS発生率、腹水穿刺率、入院期間、黄体期日数に差は認めなかった。
Y.Q. Wang, et al. J Ovarian Res, 8 (2015), p. 63
私見
月現在、OHSS予防に認められているGnRH antagonist製剤は注射剤のみですが、今後内服薬などに適応が拡大されると良いと思っています。予防投与でエビデンスが高いのは、カベルゴリンですが、便秘・立ちくらみなどの副作用を説明しておく必要があります。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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