不育症

2024.09.20

RhD陰性妊婦の妊娠初期流産・中絶に対する取り扱い(Am J Obstet Gynecol. 2024)

はじめに

RhD陰性妊婦の妊娠初期流産・中絶に対する取り扱いはCQ008-1 に記載されています。産婦人科診療ガイドライン産科編2023では、「自然流産・人工妊娠中絶・異所性妊娠後・胞状奇胎手術後、双胎一児死亡、妊娠中の羊水穿刺、絨毛採取、胎位外回転術などの処置後、腹部打撲後などの妊娠女性に関して抗D免疫グロブリンを投与する」(推奨度B)となっています。
母体胎児医学協会(SMFM)が同様のstatementを出しました。より強く推奨できる環境になったのかなと思っています。

引用文献

Practice Guideline Am J Obstet Gynecol. 2024 May;230(5):B2-B5. doi: 10.1016/j.ajog.2024.02.288.

論文内容

妊娠初期流産および人工中絶管理に関するガイドラインは、RhD検査および抗D免疫グロブリン投与の観点で様々です。妊娠12週未満の流産または人工妊娠中絶による抗RhD抗体の発症率は低いものの、大きい母集団で考えると無視できない範疇だと考えられています。抗RhD抗体の影響は、その後の妊娠のたびに増大し、胎児・新生児の貧血と早期黄疸で、重症の場合は胎児水腫、死産と関連します。RhD抗原に感作された後の妊娠による有害転帰を考慮すると、その後の妊娠の可能性があるRhD陰性女性では、感作を防ぐことが重要です。管理上および財政的に実行可能であり、中絶ケアへのアクセスを妨げない医療環境においては、RhD抗原に感作されていない女性に対して、妊娠12週未満の妊娠初期流産および人工中絶の両方に対してRhD検査と抗D免疫グロブリン投与を行うことを推奨します。
抗D免疫グロブリン投与が必要な場合、自然流産または人工妊娠中絶後72時間以内に50μgを投与すれば十分にカバーできると推奨しています。低用量の入手が困難な臨床現場もあるため、低用量が利用できない場合は300μgの抗D免疫グロブリン投与を推奨します。

私見

日本人ではRhD陰性の頻度が約0.5%と低く、なかなか遭遇しないケースですので丁寧に説明する必要がありますね。
妊娠中期に投与することで、分娩前のRhD抗原への感作リスクが1.8%から0.1~0.2%に減少します。RhD陰性の患者では、抗D免疫グロブリンを分娩後に投与することで、分娩後のRhD抗原への感作リスクが13~17%から1~2%に減少します。RhD抗原は赤血球のみに発現するため在胎週数6週以降には感作の可能性がでてきます。
今回のSMFMの声明でも、産科ガイドライン2023でも出血を繰り返す切迫流産や分娩前異常出血の抗D免疫グロブリンは、ほぼ記載されていません。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 手術

# ハイリスク妊娠

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

体外受精後の中期流産リスク因子(F S Rep. 2025)

2026.03.13

流産後RPOCに対するGnRHアンタゴニスト経口薬(レルゴリクス)の有効性(Front Med. 2025)

2025.10.28

反復流産患者における生化学的流産の臨床的意義:正倍数性胚移植による検討(Reprod Med Biol. 2025)

2025.10.10

中絶処置後のエストロゲンゲル内膜保護作用(Hum Reprod. 2024)

2024.11.28

化学流産は自己卵子でも卵子提供でも変わらない(Hum Reprod. 2024)

2024.07.11

不育症の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

Th1/Th2比測定は不妊治療に意味があるの?(Am J Reprod Immunol. 2021)

不育症の免疫療法:米国2025治療ガイドライン(Am J Reprod Immunol. 2025)

RhD陰性妊婦の妊娠初期流産・中絶に対する取り扱い(Am J Obstet Gynecol. 2024)

流産後RPOCに対するGnRHアンタゴニスト経口薬(レルゴリクス)の有効性(Front Med. 2025)

反復流産に男性因子(精液・精子)が影響する?( Clin Chem. 2019) 

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

体外受精児や人工授精児と自然妊娠兄弟の出生時特性の比較(Fertil Steril. 2026)

2026.04.01

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

2025.03.25

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23