体外受精

2024.08.19

卵巣予備能低下でのPPOS法/GnRH antagonist法(Gynecol Endocrinol. 2024)

はじめに

卵質では、PPOS法はGnRH antagonist法と同等であると判断しています。

  • High responder
    Zhi Qin Chen, et al. Fertil Steril.2024. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.027.
  • Normal responder
    La Marca A, et al.Hum Reprod. 2020. DOI: 10.1093/humrep/deaa068
  • Poor responder
    Engin Turkgeldi, et al. Hum Fertil (Camb). 2022 doi: 10.1080/14647273.2020.1794060.

Poor responderでの追加レトロスペクティブデータが出てきましたのでご紹介いたします。

ポイント

卵巣予備能低下症例に対して、PPOS法(MPA10mg/day)とGnRH antagonist法の生殖予後は差がなさそうです。

引用文献

Zuoping Shi, et al. Gynecol Endocrinol. 2024 May 6;40(1):2352133. doi: 10.1080/09513590.2024.2352133.

論文内容

卵巣予備能低下症例に対して、PPOS法(MPA10mg/day)とGnRH antagonist法の妊娠転帰を比較検討した2021年1月から2022年4月に実施されたレトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は臨床的妊娠率で、副次評価項目は生化学的妊娠率と生児出生率としました。

結果

すべての周期で全胚凍結をおこないました。GnRH antagonist法236周期とPPOS法273周期に分けられました。年齢、BMI、不妊症タイプ、不妊期間、FSH、LH、PRL、E2、治療周期数は両群間で同様でした。
臨床的妊娠率(32.71% vs. 43.90%、p = 0.082)、総ゴナドトロピン投与量、総ゴナドトロピン日数、MII数、2PN胚数、周期キャンセル率、生化学的妊娠率、流産率、生児出生率において、両群間に差は認められませんでした。
PPOS法はGnRH antagonist法よりも高品質胚の割合が高くなりました(50.12% vs 42.90%、p = 0.045)。

私見

Engin Turkgeldiらの報告でも治療成績に差はありませんでした。ただし、fPPOS法のせいかGnRH antagonist法に比べてpremature LH surge(>10 mIU/mL)はfPPOS群で4/27例、GnRH antagonist法群で2/54例でした。(p =0.19)。早発排卵はfPPOS群で1/27例、GnRH antagonist法群で0/54例でした。(p =0.91)。
卵巣予備能低下症例はfPPOS法よりPPOS法が排卵抑制の観点からは無難そうです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# GnRHアンタゴニスト

# PPOS

# 卵巣予備能

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

DYD-PPOS vs. MPA-PPOS vs. GnRHアンタゴニスト(J Assist Reprod Genet. 2025) 

2025.07.08

卵巣反応性不良患者における自然周期と調節卵巣刺激の累積生児獲得率(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.07.03

フォリトロピンデルタを用いたPPOS法 vs. アンタゴニスト法(Cureus 2025)

2025.06.05

Normal responderにおけるトリガー法の比較(Fertil Steril. 2025)

2025.05.14

早発閉経(POI)女性のホルモン補充療法中における卵胞発育(Reprod Med Biol. 2021)

2025.04.09

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

低頻度モザイク胚の出産後転機(Fertil Steril. 2024)

反復着床不全患者の事後妊娠率(J Assist Reprod Genet. 2024)

レトロゾール併用卵巣刺激は効果的?(Reprod Biomed Online. 2022)

卵巣予備能低下でのPPOS法/GnRH antagonist法(Gynecol Endocrinol. 2024)

今月の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2025.09.02

挙児希望男性の初回精液検査・精子DNA断片化率・精液酸化還元電位の異常頻度(日本受精着床学会雑誌. 2024)

2025.09.02

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

2024.10.15

低頻度モザイク胚の出産後転機(Fertil Steril. 2024)

2024.09.25

反復着床不全患者の事後妊娠率(J Assist Reprod Genet. 2024)

2024.10.11