卵の移動に使う道具の大きさを確認する方法について解説します。卵の移動にはパスツールピペットと呼ばれるガラス製のピペット(少量の液体を移動させるための器具)からガスバーナーの炎を使って溶かして引き伸ばして自作します。卵子の外径は160µmなので、ピペットの内径は160µmよりも大きいものを使わなければなりません。したがって、ピペットを自作した後は内径を必ず調べます。これには顕微鏡の接眼レンズ(覗くところ)にスケールメーターと呼ばれる定規の目盛のようなものが印字されたガラスをはめ込んで使います。我々が使っている顕微鏡の最高倍率は115倍なので、この倍率で見たときのスケールメーター一目盛が実際には何µmになるのか調べる方法を説明します。

スケールメーターとは別に対物ミクロメーターを使います。対物ミクロメーターはスライドグラスの中央に一目盛の幅が10µmの線が正確に印字されています。一目盛が10µmなので、卵子の外径160µmの場合、対物ミクロメーターの16目盛分に相当します。




あとはスケールメーターと対物ミクロメーターの目盛を重ねて、対物ミクロメーターの16目盛がスケールメーターの何目盛分に相当するか調べるだけです。当クリニックの場合、160µmはスケールメーターの19目盛分となります。したがって、スケールメーター一目盛分の大きさは160µm÷19目盛≒8.4µmになります。

なので、スケールメーターで24目盛のピペットの内径は24×8.4µm≒201.6µmとなって、卵子の外径160µmよりも大きいので、卵子を傷つけない大きさであることが分かります。

今回は卵の移動に使う道具の大きさを確認する方法について説明しました。
少しでも培養士の仕事のことを知って頂ければと思います。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
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