はじめに
若年成人(22-39歳)における喘息の有病率は6.5%とされ、活動性の喘息を持つ成人の39%が長期管理薬を使用し、24%が発作時に薬剤使用を行っています。生殖年齢女性における喘息有病率が増加していることから、喘息と妊娠しやすさに関する研究をご紹介いたします。
ポイント
喘息そのものや喘息治療薬の使用は、妊娠のしやすさ(妊孕性)に大きな影響を与えないことが示唆されました。
引用文献
Crowe HM, et al. Clin Epidemiol. 2020. doi:10.2147/CLEP.S245040
論文内容
喘息既往、喘息薬使用、初回喘息診断時年齢が妊娠しやすさとどの程度関連しているかを調査することを目的としたPRESTO研究の調査です。北米在住の21-45歳のカップルを対象としたウェブベースの前向きコホート研究(PRESTO)で、2013年7月から2019年7月に合計10,436名が登録し、8,286名が本分析に含まれました。
結果
喘息診断歴と薬物使用の有無による妊孕性への影響はわずかでした。
– 喘息診断歴+薬物使用あり:FR 1.02(95%CI: 0.91-1.15)
– 喘息診断歴+薬物使用なし:FR 1.00(95%CI: 0.91-1.09)
– 強度の高い喘息薬使用:FR 0.89 (95% CI: 0.68-1.16)
– 吸入ステロイド+長時間作用型β作動薬:FR 0.86 (95% CI: 0.66-1.12)
– 17歳以降の初回喘息診断:FR 0.89 (95% CI: 0.77-1.04)
小児期診断の影響:
– 5歳未満での診断:FR 1.04 (95% CI: 0.85-1.26)
– 5-17歳での診断:FR 1.01 (95% CI: 0.92-1.12)
私見
喘息と不妊の関連があるとする報告と、ないとする報告があり、分かれています。ホルモン異常や免疫異常、慢性炎症が不妊を引き起こす可能性があるとされていますが、詳細なメカニズムはまだ不明です。以下の研究が主な参考文献となっています:
– Gade, et al. Eur Respir J. 2014:喘息と不妊に関連(OR 1.31)
– Gade EJ, et al. Eur Respir J. 2016:HR 0.50(妊娠しにくい傾向)
– Hansen, et al. Eur Respir J. 2019:35歳以上女性で不妊治療の必要性が上昇(OR 2.2)
– Tata, et al. Am J Epidemiol. 2007:関連なし(FR 1.02)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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