治療予後・その他

2024.04.16

胚移植後の新型コロナウィルス感染による影響(Am J Obstet Gynecol. 2024)

はじめに

胚移植後の新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染が、体外受精治療における早期妊娠転帰に及ぼす影響を調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

胚移植後の新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)感染は、交絡因子を補正した場合、着床率・臨床妊娠率・流産率に影響を与えませんでした。 

引用文献

Xue-Fei Li, et al. Am J Obstet Gynecol. 2024 Apr;230(4):436.e1-436.e12. doi: 10.1016/j.ajog.2023.12.022.

論文内容

体外受精患者において、胚移植後10週以内のSARS-CoV-2感染と早期妊娠転帰との関連を検討することを目的とした中国で行われた前向きコホート研究です。 
対象は20~39歳、BMI 18~30の女性患者。2022年9月~2022年12月に登録され、2023年3月まで追跡されました。 
SARS-CoV-2感染のタイミング(移植後14日以内、28日以内、10週以内)、症状、ワクチン接種状況、ワクチン接種から胚移植までの間隔、生化学的妊娠率、着床率、臨床的妊娠率、早期流産率が評価されました。 

結果

857名が解析対象。胚移植後14日以内のSARS-CoV-2感染は生化学的妊娠率と関連なし(aOR 0.74;95%CI 0.51–1.09)。胚移植後28日以内の感染も着床率と関連なし(感染群36.6% vs. 非感染群44.0%;P=.181、aOR 0.69;95%CI 0.56–1.09)。10週以内の感染は早期流産率とも関連しませんでした(aOR 0.77;95%CI 0.35–1.71)。 

私見

SARS-CoV-2感染妊婦は、早産・妊娠高血圧腎症・帝王切開・新生児合併症などのリスクが上昇するという報告が多いです。 

生殖補助医療における影響に関しては、以下が主要報告です: 
・採卵前の感染は妊娠率の低下と関連 
M. Youngster, et al. J Assist Reprod Genet, 2022 
・無症候性または軽症の感染は成績に影響しない 
M. Youngster, et al. Hum Reprod, 2022 
M. Wang, Q, et al. EClinicalMedicine, 2021 
L.C. Delamuta, et al. Clinics (Sao Paulo), 2023 

今回の研究では、感染群の症例数が少ないこともあり、調整前データでは臨床妊娠率に差が見られましたが、体調不良が影響する可能性も考えられ、やはり体調管理の重要性が再認識されました。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 卵管疎通性検査、HSG

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