はじめに
Flexible PPOS法の良さはPPOS法の欠点である全胚凍結をしなくてはいけない状況に対して、LH抑制をかけはじめないといけないところまで、PPOS法で行うか、GnRHアンタゴニスト法で行うか意思決定を待てるところです。
fixed GnRHアンタゴニスト法と同じく、ゴナドトロピン投与6日目からのジドロゲステロン投与で、回収卵子数・成熟卵子数が変わらないかどうか調査した報告をご紹介いたします。
ポイント
ジドロゲステロンを用いたfPPOS法は、fixed GnRHアンタゴニスト法と若年のnormal responder以上の女性に関しては、同等の回収卵子数、MII数が担保され、費用も安価であることがわかりました。
引用文献
S Hendrickx, et al. Reprod Biomed Online 2023. doi: 10.1016/j.rbmo.2023.103732.
論文内容
fixed GnRHアンタゴニスト法とジドロゲステロン20mg/dayを用いたfPPOS法、両方を行なった64名エッグドナー128周期を対象としたレトロスペクティブ縦断研究です。評価項目は採卵時の回収卵丘-卵母細胞複合体(COC)数としました。
卵巣刺激は、ゴナドトロピン量1日150-225単位、卵巣刺激後6日目よりアンタゴニスト、プロゲスチン製剤追加、トリガーはGnRHアゴニストがメインとなっています。
結果
対象は27.7歳、BMI 23.9、AMH 3.0ng/mLの女性です。
COC数(平均±SD:19.7±10.8個 vs. 19.2±8.3個;P = 0.5)およびMII数(15.5±8.4個 vs. 16.2±7.0個;P = 0.19)は、fPPOS法およびfixed GnRHアンタゴニスト法で同程度でした。刺激期間(10.5±1.5日 vs. 10.8±1.5日;P = 0.14)および総ゴナドトロピン量(2271.9±429.7 IU vs. 2321.5±403.4 IU;P = 0.2)も同程度であり、早発排卵例はありませんでした。
1周期あたりの薬代総額は、fPPOS法898.3±169.9ユーロ、fixed GnRHアンタゴニスト法1196.4±207.5ユーロ(P < 0.001)で、fPPOS法が安価でした。
私見
今回の症例では早発排卵例がありませんでしたが、一般的な早発排卵の割合は1-5%です。今回の報告では、検討された症例数が少ないため、早発排卵割合は評価困難だと感じています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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