今回は新しい試みとして動画で一つの技術の一連の流れを動画で紹介しています。
今回紹介したい技術は卵子の中に精子を一つ入れて受精を促す顕微授精です。
顕微授精の一連の流れは以下の通りです。
①卵子を探して培養液で洗浄
②卵子の回りを取り囲んでいる卵丘細胞を取り外して成熟判定
③精子の探索と不動化
④卵子の紡錘糸観察
⑤卵子への精子注入
⑥受精確認
今回は、
⑥受精確認
になります。
卵子の中に精子を注入してから、約17時間後に卵子の反応を調べます。卵子の反応は以下の通りになります。
①変性(生命活動停止)
②2PN(正常受精)
③0PN(受精反応なし、あるいは、受精反応しかけ)
④1PN(異常受精)
⑤3PN(異常受精)
一つずつ解説をしています。
今回は最後の、
⑤3PN(異常受精)
になります。
3PNは卵子の中に袋が3個見える状態です。
正常受精であれば、男性のDNAの袋1個と女性のDNAの袋1個、合計2個見えるはずです。3PNの場合、卵子の外に押し出されるべき女性のDNAが何らかの不具合により、卵子の中に留まってしまい、そのまま、袋になってしまっている状態と考えられます。したがって、3PNは卵子の中に女性のDNAの袋が2個、男性のDNAの袋が1個、合計3個見える状態となっています。残念ながら治療の対象からは外されます。昨年の3PN率は2.3% (94/4066)でした。
以上、長期間に渡って顕微授精技術、その後の受精確認を紹介させていただきました。
昨年の当培養室の顕微授精の受精成績は以下の通りです。
変性: 1.9% (79/4066)
2PN:84.5% (3436/4066)
0PN: 7.1% (287/4066)
1PN: 4.2% (170/4066)
3PN: 2.3% (94/4066)
患者さんに一日でも早く妊娠していただくため、培養士はスタートとなる正常受精2PNをどれだけ高められるか?が鍵となります。裏を返せば、2PN以外の発生をどれだけ抑えられるか?が鍵とも言えます。2PN以外となってしまった場合、卵子と精子が悪いからと片付けずに、原因と対策を考えて、1%でも2PN率を高めていきたいと強く思います。
文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。