培養

2024.10.04

卵子の保管場所について(その一)

以前の記事で「卵子の保管場所」について記事をあげましたが、分かりづらい内容だったので、再度、説明したいと思います。

対象は「卵子」になります。精子と受精させる前の状態です。卵子凍結の目的は、
1. 妊孕性温存(ガン治療後の妊娠のため)
2. 社会的卵子凍結(今すぐの妊娠は考えていないため将来に備えて)
の二つになります。

今回は「卵子」で凍結する際の保管スペースについて説明します。保管スペースを居住スペースに例えると、メゾネットになります。住戸ごとに内階段があり1階と2階に分かれているマンション、または、アパートになります。

保管スペースの1階と2階にそれぞれ、保存容器を5本ずつ、合計10本収納できます。

理論上、一つの保管スペースに最大何個の卵子を収納できるか説明します。1つの保存容器に卵子を「最大」何個乗せるかによって最大収納数は変わります。

一つの保存容器に卵子を「最大2個」乗せた場合、最大収納数は20個になります。

一つの保存容器に卵子を「最大3個」乗せた場合、最大収納数は30個になります。

この理論で行けば、
「最大4個」乗せた場合、最大収納数は40個
「最大5個」乗せた場合、最大収納数は50個
と最大収納数をいくらでも増やせますが、一つの保存容器に4個以上の卵子を乗せると卵子の生存性を保障できなくなる可能性が出てきますので、当クリニックでは「最大3個」までとしています。
理論上、一つの保管スペースに最大30個の卵子を収納できることを説明しました。しかし、一回の採卵で回収できた卵子の数(成熟している卵子の数は?偶数?奇数?)の状況によって、中々、理論通りに収納できません。
次回の記事では、卵子の数や成熟度によって保存容器に乗せる数が理論通りにはいかないことを説明いたします。

文責:平岡謙一郎(亀田IVFクリニック幕張 培養管理室長/生殖補助医療管理胚培養士)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 卵子凍結

# 妊孕性温存

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