はじめに
2021年8月に子宮内膜症取扱い規約 第3版が刊行されました。今回の診療編はとても不妊患者にもわかりやすい内容となっています。一番のポイントは、内膜症単独で判断するのではなく、他の不妊原因がどの程度絡まり合っているのか、また手術をどの段階で行うのかです。また治療指針では体外受精がゴールになっていますが、体外受精でも妊娠しない場合のオプション治療は何が考えられるのかが今後の課題なんだと思います。
ポイント
子宮内膜症合併不妊では、内膜症の程度だけでなく他の不妊因子、女性年齢、卵巣予備能を総合的に判断し、漫然と一般不妊治療を継続せず、適切な時期に体外受精へステップアップすることが重要です。

まとめ
一般不妊治療(排卵誘発 ± 人工授精)
- 子宮内膜症合併不妊(特に軽症)には妊娠率向上の報告あり
- ESHREでは排卵誘発を併用しない人工授精は推奨していない
- 内膜症がない不妊患者に比べて妊娠率が低いことは明らかである
- 女性年齢が上昇する前、内膜症が増悪する可能性も視野に入れて漫然と一般不妊治療を継続しないよう努めるべきである
体外受精
- 他の不妊因子に対する場合と同様に有用であり、開始時期を逸しないことが重要(女性年齢・不妊期間・疼痛の有無・治療歴・卵巣予備能・嚢胞の有無・その他の不妊因子との兼ね合い)
- 採卵・移植により内膜症に関連する疼痛症状の増悪、嚢胞リスクは増加されないとの報告あり
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。