はじめに
流産を経験する女性のメタボリックシンドロームリスクに関しては中国とイランからの二報しかありませんが、メタボリックシンドロームリスク上昇につながるのではないかと考えられています。UK Biobankデータを用いて、反復流産既往女性の将来のメタボリックシンドロームリスクを評価した報告をご紹介いたします。
ポイント
反復流産既往女性は40-60歳においてメタボリックシンドロームになる割合が高そうです。
引用文献
Ji Hye Bae, et al. Fertil Steril. 2023 Dec;120(6):1227-1233. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.09.012.
論文内容
UK Biobankデータを用いて、反復流産後のメタボリックシンドロームリスクを評価することを目的とした前向きコホート研究です。反復流産は2回以上の自然流産、メタボリックシンドロームは腹部肥満、高トリグリセリド血症、低HDL血症、高血圧、高血糖のうち3つ以上と定義しました。
登録時に病歴および生殖治療歴を検索し、少なくとも1回以上の妊娠歴がある40~69歳の女性を対象としました。
主要評価項目はメタボリックシンドロームの有病率、副次評価項目はメタボリックシンドロームの5つの診断因子としました。
結果
反復流産歴のある15,702名と反復流産歴のない212,972名を含む計228,674名の女性を解析しました。反復流産既往のある女性は40~60歳のメタボリックシンドローム有病率が高い(33.0% vs. 31.5%)。共変量(年齢、人種、出産回数、早期閉経、喫煙、飲酒、身体活動)で調整した後も、反復流産後のメタボリックシンドロームリスク増加を認めました(aOR 1.10;95%CI 1.06-1.15)。メタボリックシンドロームの5つの診断因子の解析において、反復流産歴は腹部肥満、高トリグリセリド血症、低HDL血症、高血糖のリスクを増加させました。
私見
過去の報告でも反復流産は糖尿病リスク上昇と関連があるというシステマティックレビューがあります(You Q, et al. Diabetes Res Clin Pract 2023;195:110224.)。糖尿病とメタボリックシンドロームは密接に関係がありますので、反復流産既往女性の不妊治療終焉時には情報提供していくことがよいのかもしれません。
高血圧との因果関係が今のところ強くは過去の論文も含めて出ていないことも学びになりました。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。