体外受精

2023.12.08

rFSH/HMG製剤を用いた卵巣刺激時のホルモン動態(Hum Reprod. 2023:1)

はじめに

HMG製剤による卵巣刺激は、rFSH製剤による卵巣刺激に比べてトリガー時のP4が上昇しないことがわかっています。卵巣刺激時のsteroidogenesisを、24歳代・BMI21前後の卵子提供女性に対するGnRHアンタゴニスト法にて調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

HMG卵巣刺激は、pregnenoloneからandrostenedioneへのΔ4経路を促進します。卵巣反応にかかわらず、HMG卵巣刺激とrFSH卵巣刺激では卵胞ステロイド形成経路が異なるため、トリガー時のプロゲステロン値に差が生じる可能性があります。 

引用文献

Ernesto Bosch, et al. Hum Reprod. 2023 Nov 30:dead251. doi: 10.1093/humrep/dead251

論文内容

2016年10月から2018年6月にリクルートされた卵子提供のための卵巣刺激を受けている女性を対象としたGnRHアンタゴニスト法(225IU/日:rFSH(56周期)またはHMG(56周期))によるRCT。 
対象は、月経周期が規則的(25~35日)、正常な卵巣予備能(AMH=10~30pMol/l)を有する18~35歳の女性です。FSH、LH、エストラジオール(E2)、エストロン、プロゲステロン、プレグネノロン、17-OH-プロゲステロン、アンドロステンジオン、デヒドロエピアンドロステンジオン、テストステロンが、刺激1、4、6、8日目およびトリガー日に、血清中および卵胞液中で測定されました。 

結果

両群の年齢、BMI、AMHは同等でした。卵巣反応も同様で、rFSH群とHMG群ではそれぞれ回収卵子数17.5±7.9個(平均±SD)vs. 16.5±7.5個でした(P = 0.49)。 
トリガー日の血清P4(ng/ml)は、HMG群:0.46±0.27に対し、rFSH群:0.68±0.50でした(P = 0.010)。プロゲステロンの両群の差は刺激6日目および8日目でも有意でした。 
プロゲステロン/プレグネノロン比は、刺激8日目からトリガー日までrFSH群で増加しました(P = 0.019)。 
トリガー日の血清アンドロステンジオン(ng/ml)は、HMG群:3.0±1.4に対し、rFSH群:2.4±1.1でした(P = 0.015)。アンドロステンジオンの両群の差は、刺激8日目でも有意でした。 
アンドロステンジオン/プレグネノロン比は、刺激6日目、8日目およびトリガー日においてHMG群で増加しました(P = 0.012)。 
卵胞液E2、FSH、LH、デヒドロエピアンドロステンジオン、アンドロステンジオン、テストステロンはrFSH群よりHMG群で増加しました。卵胞液中のプロゲステロン、エストロン、17-OH-プロゲステロン、プレグネノロンには差は認められませんでした。 

私見

卵巣刺激に関する報告では、2023年で最も心に残った一本です。 
少し複雑なので、自学も含めて別ブログで追記いたします。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 卵巣刺激

# GnRHアンタゴニスト

# hMG

# プロゲステロン/プロゲスチン

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

生殖補助医療におけるLH活性の再考(Reprod Biomed Online. 2026)

2026.10.16

DuoStimから学ぶExtended ovarian stimulationという概念(J Assist Reprod Genet. 2026)

2026.10.14

フォリトロピンデルタ個別投与のオランダリアルワールドデータ(Reprod Med Biol. 2026)

2026.10.13

卵巣予備能低下女性に対する修正レトロゾール法 vs GnRHアンタゴニスト法RCT(Nat Commun. 2026)

2026.09.04

体外受精の人気記事

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

SEET法は凍結融解胚移植の成績を悪化させる可能性あり?(Sci Rep. 2025)

2026.03.30

凍結融解胚盤胞移植後7-11日目の血清hCG値出生予測(F S Rep. 2025)

2026.01.23

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27

45歳以上の体外受精は生児を授かる治療としては「無益」・・・(Fertil Steril. 2022)

2022.06.24

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2024年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2026.09.10

千葉県「早期不妊検査費助成事業」が2026年10月1日から始まりました―夫婦ふたりで不妊検査を受けると、1組につき上限3万円まで助成―

2026.10.01

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

卵子の大きさ

2025.03.08