はじめに
子宮内細菌叢検査は先進医療として行える検査となっています。Igenomix社が提供するEMMAでラクトバチルス90%未満の女性は90%以上の女性に比べて生殖予後が悪いことがわかっています(Moreno I, et al. Am J Obstet Gynecol. 2016; 215:684–703.)。国内施設で反復着床不全女性に子宮内細菌叢検査を行い、生殖予後を比較検討した報告をご紹介いたします。
ポイント
子宮内細菌叢検査で異常を認めた反復着床不全女性において、検出菌種に応じた抗生物質とプロバイオティクス投与により累積臨床妊娠率が約2倍向上することが示された有用性の高い治療選択肢です。
引用文献
Nanako Iwami, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Jan;40(1):125-135. doi: 10.1007/s10815-022-02688-6.
論文内容
2019年3月から2021年4月に3回以上の反復着床不全(RIF)女性195名を対象とし、16S rRNA遺伝子配列決定による子宮内細菌叢の検査の実施有無により生殖医療結果を比較した前向きコホート研究です。131名が検査を実施、64名が検査を実施せず、その後の受精胚移植を実施しました。主要評価項目は続く2回の受精胚移植での累積臨床妊娠率としました。
結果
異常と考えられる子宮内細菌叢が30名(22.9%)で検出されました。この30名中1名を除き、検出された細菌属に応じた抗生物質を投与し、その後プロバイオティクスによる治療を行いました。その後の累積臨床妊娠率(介入群:64.5% vs. 非介入群:33.3%、p = 0.005)および継続妊娠率(介入群:48.9% vs. 非介入群:32.8%、p = 0.028)となりました。
私見
このデザインでは子宮内病変がある女性、サンプル採取前3ヶ月以内に抗生物質治療を行った女性などは除外されています。サンプル採取の時期ですが、排卵が規則正しい女性は月経周期15-25日目、ホルモン調整周期の女性は黄体補充5-7日目に採取しています。子宮内細菌叢検査はIgenomixのEMMA・ALICE検査で実施しています。
使用された乳酸菌配合の腟坐剤はInVag®[Biomed社、ポーランド、クラクフ]7日間、またはLactoflora®[STADA社、ポルトガル]10日間のようです。
現在では、qPCR法に変わっており、新しいエビデンスも蓄積されてきています。国内で開発された生菌のラクトバチルス製剤もでてきていますので、今後も注視していきたいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。