体外受精

2023.03.06

レトロゾール排卵周期凍結胚移植の低E2濃度は悪影響?(F S Rep. 2021)

はじめに

レトロゾール排卵周期凍結胚移植を行うときにエストロゲンが下がりすぎて不安になることがあります。このことが妊娠後経過に影響を及ぼすことはあるのでしょうか。ご紹介する報告はレトロゾール5mg/日 5日間内服し、排卵後2日目よりプロゲステロン腟剤200mg/日のみで黄体補充した生殖医療成績を比較検討しています。 

ポイント

レトロゾール排卵周期凍結胚移植の低E2濃度は、流産率の上昇および出生率の低下と関連している可能性があります。まだまだ小規模な研究しか存在せず今後の報告を注視していく必要があります。

引用文献

Wendy Y Zhang, et al. F S Rep. 2021 May 27;2(3):320-326. doi: 10.1016/j.xfre.2021.05.007. 

論文内容

2017年1月から2020年4月にレトロゾール排卵周期凍結胚移植を施行した女性(n=217名)を対象にトリガー当日の血清E2値が10パーセンタイル値未満(E2<91.16pg/mL、n=22名)を「低E2群」と定義し、血清E2値が10パーセンタイル値以上(E2≧91.16pg/mL、n=195名)を「正常E2群」と生殖医療成績を比較したレトロスペクティブコホートです。評価項目は臨床妊娠率、流産率、出生率を含む周産期結果(分娩週数、出生時体重、アプガースコア、胎児奇形率など)としました。 

結果

エストラジオール値は、「低E2」群66.8±14.8pg/mL、「正常E2」群366.3±322.1pg/mLでした。トリガー日子宮内膜厚や妊娠初期のプロゲステロン値などの患者背景に差はありませんでした。「低E2群」では流産率が高く(36.4% vs. 8.8%, aOR 8.06)、出生率が低くなりました(31.8% vs. 57.9%, aOR 0.28)。分娩週数、出生時体重、アプガースコア、胎児奇形率には差がありませんでした。 

私見

この報告では10パーセンタイルだけではなく、25パーセンタイルおよび50パーセンタイルのカットオフを用いた二次解析も行っています。 

aOR 95% CI P 値 
10パーセントタイル 
臨床妊娠率 0.52 (0.18, 1.51) 0.23 
流産率 8.06 (1.36, 47.61) 0.031 
生児獲得率 0.28 (0.10, 0.81) 0.019 
25パーセントタイル 
臨床妊娠率 0.63 (0.30, 1.33) 0.23 
流産率 2.69 (0.47, 15.46) 0.27 
生児獲得率 0.53 (0.26, 0.98) 0.04 
50パーセントタイル 
臨床妊娠率 0.49 (0.25, 0.93) 0.029 
流産率 1.42 (0.25, 8.03) 0.70 
生児獲得率 0.48 (0.25, 0.91) 0.026 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 流産、死産

# 排卵周期下胚移植

# 凍結融解胚移植

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