体外受精

2025.11.19

5回反復凍結融解胚移植の累積出生率解析(Hum Reprod Open. 2024)

はじめに

生殖補助医療において凍結融解胚移植が一般的となり、全胚凍結戦略が広く用いられるようになりました。妊娠に至らない患者は反復して凍結融解胚移植を受けることが多いですが、どのような女性が反復凍結融解胚移植から利益を得られないのかについては明らかではありませんでした。今回、86,496採卵周期82,022 凍結融解胚移植周期を実施した43,972名女性を対象に、女性年齢、採取卵子数、不妊原因別に累積出生率(CLBR)を解析し、反復凍結融解胚移植の有効性について検討した大規模レトロスペクティブ研究をご紹介いたします。

ポイント

年齢、回収卵子数が反復凍結融解胚移植の累積出生率に影響することは明確であり、不妊原因別ではPCOS、男性因子、原因不明、卵管因子、子宮内膜症、複合因子、子宮因子、卵巣予備能低下の順で成績が低下しました。

引用文献

Yuqi Zeng, et al. Hum Reprod Open. 2024;2024(4):hoae063. doi: 10.1093/hropen/hoae063.

論文内容

全胚凍結戦略下で反復凍結融解胚移植(FET)FETから利益を得られない特定の女性群を明らかにすることを目的としたレトロスペクティブ研究です。
2010年1月から2023年3月の間に全胚凍結戦略下でARTを受けた43,972名女性(86,496採卵周期、82,022 FET周期)を対象としました。初回採卵時の女性年齢(30歳未満、30〜34歳、35〜39歳、40〜42歳、43〜44歳、45歳以上の6群)、初回採卵時の回収卵子数(1〜5個、6〜10個、11〜15個、16〜20個、20個超の5群)、不妊原因(卵管因子、男性因子、PCOS、卵巣予備能低下、子宮内膜症、子宮因子、複合因子、原因不明不妊、その他不妊の9群)に分類し、各FET周期におけるCLBRをKaplan-Meier法(楽観的方法)と競合リスク法(保守的方法)で解析しました。多変量CoxモデルとFine-GrayモデルでCLBRと年齢、採取卵子数、不妊原因との関連を検討しました。

結果

年齢別のCLBRは5回のFET周期後、楽観的方法では30歳未満、30〜34歳、35〜39歳、40〜42歳、43〜44歳、45歳以上で順に96.4%、94.2%、86.0%、50.2%、23.1%、10.1%でした。保守的方法では87.1%、82.0%、67.8%、33.9%、13.8%、3.5%でした。女性年齢の上昇に伴いCLBRは顕著に低下しました。
回収卵子数別のCLBRは増加傾向を示し、楽観的方法では1〜5個、6〜10個、11〜15個、16〜20個、20個超まで順に82.5%、91.7%、93.6%、94.1%、96.2%でした。保守的方法では58.6%、76.7%、84.8%、88.0%、92.5%でした。
不妊原因別のCLBRは楽観的方法で卵管因子群91.7%、男性因子群93.1%、PCOS群96.6%、卵巣予備能低下群79.2%、子宮内膜症群89.9%、子宮因子群76.1%、複合因子群90.0%、原因不明群92.9%、その他不妊群35.4%でした。保守的方法ではそれぞれ77.3%、79.4%、88.9%、46.7%、72.7%、62.1%、74.4%、78.8%、20.1%でした。

私見

本研究は女性年齢が反復凍結融解胚移植結果に最も重要な因子であることを明確に示しています。

年齢とCLBRに関する先行研究

  • Zhu, et al. (Hum Reprod, 2018)は20,687名を対象とし、初回完全周期でのCLBRが31歳未満で63.8%、40歳超で4.7%と報告し、年齢による顕著な差を示しました。
  • Raz, et al. (J Assist Reprod Genet, 2018)は44〜45歳では3回までの胚移植、Khalife, et al. (Int J Fertil Steril, 2020)は40歳超では4回までの胚移植、Lebovitz, et al. (Reprod Biomed Online, 2018)は41〜44歳では6回までの胚移植を推奨しています。

不妊原因とCLBRに関する比較
不妊原因別CLBRを包括的にランク付けし、PCOS群が最高、次いで男性因子、原因不明、卵管因子、子宮内膜症、複合因子、子宮因子、卵巣予備能低下、その他不妊の順であることを明らかにしています。
本研究にはいくつかの重要な限界があります。第一に、PGT(着床前遺伝学的検査)は実施されておらず、形態学的評価のみで胚選択が行われています。特に高齢女性では染色体異数性胚の割合が70-90%に達するとされており(Franasiak, et al. Fertil Steril, 2014)、本研究で示された45歳以上のCLBR低下(保守的方法で3.5%)には異数性が大きく関与していると推測されます。PGT-Aによる正倍数性胚の選別により、高齢女性やDOR患者でも胚あたりの妊娠率は改善する可能性があります。
第二に、内膜調整方法(自然周期、ホルモン調整周期、レトロゾール刺激、HMG刺激)がCLBRに与える影響は本研究では検討されていません。Table 2, 3では各群での使用割合が示されていますが、内膜調整方法別のCLBR比較や多変量解析での調整は行われていないため、最適な内膜調整方法については今後の検討課題です。
年齢とCLBRに関する先行研究や今回の研究からも、高齢は一定回数を決めて胚移植をして、結果が出ない場合は治療中断も検討とされています。国内の保険診療の胚移植回数も同様の考え方ですよね。ただ、年齢は異数性胚が増えるわけなのでPGTを実施しないのであれば卵子提供が自由に普及していない国内においては移植し続けるしかないのが現状です。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

# 凍結融解胚移植

# 年齢素因

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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