
はじめに
凍結融解胚盤胞移植では2〜4時間前に融解する方法が一般的でしたが、研究施設では5年前から移植の20〜22時間前に融解する新しいプロトコルを導入しました。多くの症例で胚盤胞は培養中に発育を続けてgradeが向上する一方、温存性は保たれていてもそれ以上発育しない胚盤胞も存在します。今回、融解後培養で発育した胚盤胞と発育しなかった胚盤胞の妊娠成績を比較した報告をご紹介いたします。
ポイント
融解後20〜22時間の培養でfair gradeの胚盤胞が発育した場合、発育しなかった場合と比較して臨床妊娠率が有意に高くなり、移植胚数決定の参考因子となり得ます。
引用文献
Jigal Haas, et al. J Assist Reprod Genet. 2018;35(12):2195-2199. doi: 10.1007/s10815-018-1308-0.
論文内容
融解後培養中に発育を続けた胚盤胞と発育しなかった胚盤胞との間で妊娠率を比較することです。
2012年1月から2016年12月までの期間に、day 5でガラス化保存された胚盤胞を融解し20〜22時間培養した後に移植したFET周期375例を対象としたシングルセンターのレトロスペクティブコホート研究です。day 5のガラス化胚盤胞のみを対象とし、単一胚移植周期に限定し、PGT後の胚は除外しました。子宮内膜の準備はホルモン調整周期または自然周期で行い、いずれもプロゲステロン投与5日目に融解、6日目に移植しました。胚盤胞のgradeはGardner分類およびSART簡易分類(good:ICM grade A かつ TE grade A or B、fair:ICM grade B かつ TE grade A, B, or C、poor:ICM grade C)を用いて、融解直後と移植直前の2回評価しました。臨床妊娠は経腟超音波での胎囊確認、継続妊娠は胎児心拍確認と定義しました。
結果
合計375例が解析対象となり、good 228個、fair 87個、poor 60個の胚盤胞が移植されました。臨床妊娠率はgood群50%、fair群19.5%、poor群3.3%(p<0.01)、継続妊娠率はそれぞれ38.5%、13.6%、1.7%(p<0.01)と、good群が他群より有意に高い結果でした。多変量回帰分析で採卵数、MII数、受精卵数、新鮮周期での総胚盤胞数を補正しても、移植時の胚盤胞のgradeが継続妊娠率と関連していました(OR 3.7、CI 2.1–6.6、p<0.001)。
移植時にgood gradeであった胚盤胞227個の内訳は以下の通りでした。
- 48個(21%):融解時にはfairであったが、20〜22時間の培養中にgoodへ発育したもの
- 179個(79%):融解時にgoodであり、培養後もgoodであったもの
このうち、培養中によりよいgradeへ発育した胚盤胞(例:3AB→4AA、3AA→4AAなど)は147/227(65%)でした。培養中に発育したgood群と発育しなかったgood群との間で、臨床妊娠率(51.7% vs. 46.2%、p=NS)、継続妊娠率(38.7% vs. 37.5%、p=NS)に差は認めませんでした。多変量回帰分析でも、培養中の発育の有無は臨床妊娠率・継続妊娠率に有意な影響を与えませんでした。
移植時にfair gradeであった胚盤胞88個の内訳は以下の通りでした。
- 54個(61.3%):融解時にはpoorまたはfairであったが、20〜22時間の培養中にfairへ発育または維持したもの
- 34個:融解時にgoodまたはfairであり、培養後にfairとなったもの
培養中によりよいgradeへ発育したfair群(55個)は、発育しなかったfair群(33個)と比較して、臨床妊娠率が有意に高くなりました(25.4% vs. 9%、p=0.05)。継続妊娠率は18.1% vs. 6%(p=NS)でした。多変量回帰分析では、fair群において培養中に発育した群は発育しなかった群と比較して、臨床妊娠率(OR 6.6、CI 1.4–3.3、p=0.02)と継続妊娠率(OR 7.5、CI 1.3–5.0、p=0.04)の有意な上昇と関連していました。
移植時にpoor gradeであった胚盤胞60個の内訳は以下の通りでした。
- 31個:融解時にはgoodであったが、20〜22時間の培養中にpoorへ低下したもの
- 23個:融解時にはfairであったが、20〜22時間の培養中にpoorへ低下したもの
- 6個:凍結時poor、融解時もpoor、培養後もpoorのまま発育しなかったもの(臨床妊娠2例、継続妊娠1例)
- 14個:凍結時からpoorでガラス化保存されたもの。このうち8個は培養中にfair gradeへ発育、6個は発育してgrade改善はしたもののpoorのまま留まりました。この14個全体での臨床妊娠率は2/14(14.3%)、継続妊娠率は0/14(0%)でした。
私見
発育しないfair胚盤胞では継続妊娠率が6%と極めて低く、利用可能な他の胚盤胞があれば追加で融解し2個移植を考慮する選択肢が示唆されました。一方、good gradeの胚盤胞では培養中の発育の有無は妊娠率に影響しない結果でした。
Goodは回復培養での観察なく移植、fair以下は追加融解を考えるなら回復培養ありというのが理にかなった方法かもしれませんね。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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