受精胚の凍結を成功させるためには、約80%と言われる細胞の中の水分を抜いて、マイナス196℃の液体窒素の中に入れたあと、細胞の中をガラス化状態にする必要があります。
このガラス化状態は固体ではなく、アイスクリーム状になっていると言われています。細胞の中の水分をそのままにマイナス196℃の中に受精胚を入れると、細胞の中は凍った氷の結晶によって固体化し、細胞は物理的に破壊、その結果、受精胚は死んでしまいます。
このガラス化する確率の公式はこちらになります。値が高ければ高い程、ガラス化状態が高く凍結が成功する確率が高まります。

この公式が意味するところは、凍結するときに受精胚と一緒に載せる凍結液の量(サンプルの量)を少なくすればするほど、ガラス化する確率は高くなるということです。また、凍結液の量を少なくすればするほど、マイナス196℃までに冷える時間が短くなることで冷却速度も上がることを意味しています。
こちらは受精胚を凍結するときの動画になります。凍結保存容器を液体窒素の中に投入する前に受精胚と一緒に載せる凍結液の液量を極力減らして、凍結の成功率を高めている様子がお分かり頂けると思います。
次回は同じ公式を使って融解時の手技で特に気を付けなければならない点について解説致します。
文責:平岡謙一郎(培養室長)
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