一般不妊

2022.12.21

AMH 1ng/mL未満の患者の人工授精卵巣刺激は?( Fertil Steril. 2022)

はじめに

人工授精成績はAMHの高い・低いで成績が変わるのでしょうか。抗エストロゲン剤(クロミフェンもしくはレトロゾール)もしくはゴナドトロピン注射剤で卵巣刺激を行った場合の成績を検討した報告です。複数排卵でも人工授精をしているので国内事情とは異なりますが、参考になる報告だと感じていますので取り上げさせていただきます。

ポイント

抗エストロゲン剤(クロミフェンもしくはレトロゾール)卵巣刺激での人工授精による妊娠成績は年齢を問わず、AMH 1ng/mLカットオフでは差がありません。ゴナドトロピン注射剤による卵巣刺激での人工授精による妊娠成績は若い層では良いですが、多胎が増えていることを考えると複数排卵割合が増えた影響だと考えます。

引用文献

Phillip A Romanski, et al. Fertil Steril. 2022 Nov 12;S0015-0282(22)01427-3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.09.010.

論文内容

2015年から2019年に生殖医療単施設による卵巣刺激による人工授精を1回以上行った患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。治療開始後12ヶ月以内にAMH値を測定しました。カットオフはAMH値 1.0ng/mLとしました。卵巣刺激による人工授精は、3周期、または妊娠継続するまでを対象としました。女性年齢で層別化し(35歳未満、35~40歳、40歳以上)、AMH低値群およびAMH正常群と年齢調整ポアソンモデルを用いてリスク比として定量化しました。主要評価項目は継続妊娠率としました。

結果

3,122名5,539周期に抗エストロゲン剤(クロミフェンもしくはレトロゾール)を経口投与し、1,060名1,630周期にゴナドトロピン注射剤を投与しました。抗エストロゲン剤では、周期あたりの継続妊娠率は、AMH低値群およびAMH正常群で差がありませんでした(35歳未満:15.4% vs. 14.9%、35-40歳:10.0% vs. 11.0%、40歳以上:2.8% vs. 3.3%)。ゴナドトロピン注射投与では、35歳未満ではAMH低値群の継続妊娠率はAMH正常群より低くなりました(12.1% vs. 23.5%; RR, 0.52; 95%CI, 0.28-0.97)。35-40歳でも同様の傾向でした(12.5% vs. 18.5%; RR, 0.70; 95% CI, 0.49-0.99)。40歳以上の場合では、AMH低値群およびAMH正常群で差がありませんでした(3.0% vs. 4.0%; RR, 0.86; 95% CI, 0.31-2.35)。多胎妊娠は、抗エストロゲン治療ではAMH低値群およびAMH正常群で差がありませんでした(13.1% vs 10.8%)。しかし、ゴナドトロピン注射投与では、AMH正常群は、多胎妊娠が多くなりました(18.6% vs. 31.1%)。

臨床プロトコール

抗エストロゲン剤
月経2日目から内服開始
クロミフェン:1日50~100mgを5日間投与
レトロゾール:1日2.5~5mgを5日間投与
Dominant follicleが20mmを超えたところでhCGトリガーを実施し24~36時間後に人工授精を実施しました。hCGトリガー前にLHサージが検出された場合は、翌日に人工授精を実施しました。

ゴナドトロピン注射剤
月経2日目から注射開始
rFSHおよび/またはhMGを毎晩注射
Dominant follicleが17mmを超えたところでhCGトリガーを実施し24~36時間後に人工授精を実施しました。hCGトリガー前にLHサージが検出された場合は、翌日に人工授精を実施しました。
黄体補充は、人工授精後2日目からプロゲステロン腟剤で行いました。

私見

この論文では、複数排卵でもそのまま人工授精をしているので多胎率がとても高いのだと思います。ASRMのオピニオンだと40歳未満の患者に2個以上の>16mmの卵胞、または3個以上の>14mmの卵胞が生じた場合、治療をキャンセルすることも提案するように推奨されています。Tableから抜粋しましたが、day2から卵巣刺激を開始すると、これだけ発育卵胞数が増えるのだと感じました。やはりday5くらいからの方が複数発育卵胞は避けることができそうです。

抗エストロゲン剤ゴナドトロピン注射剤
AMH低値群AMH正常群AMH低値群AMH正常群
年齢38.9歳35.2歳40.5歳36.6歳
トリガー時14mm以上の卵胞数の割合
1個31.1%31.1%47.1%18.8%
2個38.5%37.4%25.4%21.2%
3個23.3%22.2%14.1%25.2%
4個以上7.1%9.4%13.4%34.9%

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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