一般不妊

2022.11.30

痩せ型女性は人工授精成績が悪い?( J Assist Reprod Genet. 2022)

はじめに

やせ女性が体外受精成績不良となるという報告が複数でてきていますが、一般不妊治療との関係を示した報告は多くありません。今回、肥満患者を除いた場合の体重で層別化した人工授精成績の報告をご紹介いたします。

ポイント

WHO基準に従い、BMI< 18.5を低体重、BMI 18.5–24.9を正常体重、BMI 25.0–29.9を過体重とし肥満を除いて人工授精成績を比較した場合、低体重女性(BMI<18.5)は人工授精成績不良と関係していそうです。

引用文献

Juan Zheng, et al. J Assist Reprod Genet. 2022 Nov 21. doi: 10.1007/s10815-022-02658-y.

論文内容

2015年7月から2020年12月までに13,745周期の人工授精治療を受けた女性、6,407名を対象に行ったレトロスペクティブコホート研究です。BMIで層別化し、Cox回帰を用いて、人工授精とBMIとの累積出生率を比較検討しました。GEEモデルを用いて、1周期あたりの出生率を解析しました。
調整前総運動精子数は100万以上を対象としています。人工授精はレトロゾールを使用するか、HMG注射37.5-75単位/日を使用しました。卵胞径が18mmに達した状態でrhCGを投与し32-36時間後に人工授精を実施しています。黄体補充として、ジドロゲストロン20mg/日を2週間投与しました。

結果

正常体重の女性(n=4563)と比較して、低体重の女性(n=990)は累積妊娠率および出生率が低くなりました(それぞれ20.71% vs. 25.93%、17.17% vs. 21.61%)。
一方、過体重女性(n=854)は累積妊娠率と出生率が高くなりました(31.97%, 26.58%)。交絡因子で調整した結果、低体重女性と正常体重女性を比較すると、4回までの人工授精周期にて出産を達成するHRは0.80(95%CI:0.67-0.95)でした。GEE分析では、低体重の女性は、卵巣刺激、子宮内膜厚、卵胞径などの周期特異的パラメータを調整した上で、周期あたりの出生率の低下(OR 0.79, 95% CI: 0.66-0.95)とも関連を認めました。
そのほか、多変量解析モデルで臨床妊娠率に独立した影響を与えた他の変数は、年齢、基礎FSH、基礎LH、卵巣刺激、不妊期間、発育卵胞の人工授精決定時の直径、子宮内膜厚でした。自然周期と比較して、卵巣刺激内服周期は1.31倍(95%CI:1.12-1.54)、ゴナドトロピン周期は2.02倍(95%CI:1.71-2.38)出生率が上昇しました。潜在的交絡因子を調整した結果、子宮内膜厚7mm未満の症例における臨床妊娠率は、子宮内膜厚9mm以上の症例より有意に低くなっていました(p<0.01)。

私見

他のいくつかの研究では、BMIと人工授精成績には関連がないとされています。
今回の研究は、レトロスペクティブコホート研究ながらビッグデータですし、アジアからの報告ですので、参考にする価値があるかなと思っています。BMI以外の人工授精成績に寄与する項目も細かくtableにまとめられています。

BMIと人工授精成績の関連がない報告1:サウジアラビア
Isa AM, et al. Int J Fertil Steril. 2014;8(3):255–60.
301名の女性を対象とした前向きコホート研究。BMI≧35で最も妊娠率が高く(13.04%)、BMI 25〜18.5で最も妊娠率が低かった(7.84%)が有意差

BMIと人工授精成績の関連がない報告2:ベルギー
Huyghe S, et al. Facts Views Vis Obgyn. 2017;9(2):93–100.
パートナー精液を用いた人工授精1401周期とドナー精液を用いた人工授精1264周期の前向きコホート研究。
パートナー精液群では女性のBMIが臨床妊娠に関連あり(BMI<20、20-24.9、25-29.9、>30で臨床妊娠率6.5%、8%、16.3%、9.4%、p=0.032)、ドナー精液群では関連なし(BMI<20、20-24.9、25-29.9、>30で臨床妊娠率11.1%、18.5%、18.0%、14.7%)。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 人工授精

# 体重、BMI

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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