一般不妊

2022.01.13

子宮内膜ポリープを有する慢性子宮内膜炎には手術(Am J Reprod Immunol. 2021)

はじめに

子宮内膜ポリープと慢性子宮内膜炎の関係は切り離すことができません。Cicinelliらは子宮内膜ポリープと診断された女性において、慢性子宮内膜炎の高い有病率(76.7%)を報告しています。慢性子宮内膜炎があるからポリープができたのか、ポリープがあるから慢性子宮内膜炎が起こっているのかの議論はするだけ無駄なほど併発しています。内膜ポリープを有し手術を行った後、慢性子宮内膜炎を診断された時に抗生剤を内服してもらうかどうかは結論が出ていない分野です。患者様からすると抗生剤内服をする方が無難な気がしていて内服を希望されることが多いですが、本当にそうでしょうか。内膜ポリープを取るだけで感染性ではなく炎症性に誘発された慢性子宮内膜炎は自己治癒する可能性もあります。こちらを検討した報告です。

ポイント

子宮内膜ポリープを有する慢性子宮内膜炎患者において、子宮鏡下ポリープ切除術のみで約9割が治癒し、術後の抗生剤投与は治癒を遅らせる可能性が示されました。

引用文献

Keiji Kuroda, et al. Am J Reprod Immunol. 2021. DOI: 10.1111/aji.13392

論文内容

2019年3月から2020年3月の間に子宮鏡下内膜ポリープ切除術を行った267名を対象に横断研究を行いました。手術中に内膜ポリープ部分の組織、ポリープ以外の組織、子宮内細菌培養検体を採取しました。CD138の免疫染色を行い、細胞数5個以上を慢性子宮内膜炎と診断しました。ポリープ切除後に慢性子宮内膜炎と診断された222名の女性のうち、62名にはドキシサイクリンを投与し(抗生物質投与群)、160名には抗生物質を投与しませんでした(非抗生物質投与群)。術後の内膜組織採取は抗生剤内服終了後一週間以上経った黄体期もしくは術後排卵を確認した後の黄体期に行っています。

結果

子宮内膜ポリープを有する不妊症患者のほとんどが慢性子宮内膜炎でした(92.6%)。子宮鏡下ポリープ切除術による慢性子宮内膜炎からの回復率は、抗生物質非投与群の方が抗生物質投与群よりも有意に高くなりました(88.8% vs. 58.1%、p<0.0001)。非抗生物質投与群の慢性子宮内膜炎からの回復期間は抗生物質投与群よりも短くなりました(42.6±41.0日 vs. 56.5±32.3日、p<0.0001)。6ヵ月以内の臨床的妊娠率は、非抗生物質投与群が抗生物質投与群よりも高くなりました(63.2% vs. 43.8%、p=0.034)。
子宮内膜ポリープは慢性子宮内膜炎と関連していました。子宮内膜ポリープを有する慢性子宮内膜炎患者のほとんどは、ドキシサイクリンを使用せずに手術のみで治癒しました。不適切な抗生物質療法は、慢性子宮内膜炎からの回復を遅らせ、慢性子宮内膜炎および妊娠率に対する手術の有効性を低下させる可能性があります。

私見

子宮内膜ポリープがあると高率に慢性子宮内膜炎があり、手術すると治癒する確率が高いため、物理的な大きさによる着床阻害ではなく慢性子宮内膜炎による着床阻害の観点からは手術を実施する方が良さそうですね。
今回の報告では術後の抗生剤治療が、慢性子宮内膜炎治癒率を遅らせた結果になっています。理由として抗生剤投与が有害な感染だけではなく子宮内膜の乳酸菌比率を抑制し、慢性子宮内膜炎からの自己治癒を遅らせるのでは?としていますが、そこまで踏み込めるデータではありません。偶然なのか、何かの問題点を提起する結果なのか、今後検討していかなければいけない部分なのだと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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